「本気で取り組めばどんな挑戦も楽しい」。若きAI起業家がスタートアップを目指す理由
「本気で取り組めばどんな挑戦も楽しい」と語るのは、兵庫県立大学でAIと意思決定理論を学ぶ船越さん。
AIサービスを次々と開発・世に送り出す中で、自然と起業の道が開けていったと言います。
今回は研究と並行しながら、空間に合ったインテリアアートを生成してくれる「kAIga Maker(絵画メーカー)」を展開する船越さんに、スタートアップへ挑戦のストーリーを伺いました。
プロフィール
船越 丈寛
2002年神戸市生まれ。兵庫県立大学 社会情報科学部在学中。大学でITを専攻する傍ら、AIビジネス、WEB開発で起業している。部屋の写真からAIがその空間にあったオリジナルのインテリア絵画を制作、配送を行うサービス「kAIga Maker(絵画メーカー)」を立ち上げる。
船越さんの現在の活動を教えてください。
船越さん:現在は兵庫県立大学の社会情報科学部で、AIと意思決定理論というテーマで研究をしています。
高校生の頃から趣味でプログラミングを始め、これまで数十個のサービスを作ってきました。中にはコミュニケーションを促進するカードゲームや名刺デザインを提案するAIサービスなど、利益をあげたものもいくつかあります。
船越さん:現在取り組んでいるビジネス「kAIga Maker(絵画メーカー)」は、部屋の写真を撮影するとその空間にあったインテリアアートをAIが自動生成してくれるサービス。
開発のきっかけは、自分の部屋に飾る絵をショップやECサイトで探したことでした。種類がありすぎてどれがいいのか迷ってしまうし、自分のセンスに自信が持てず、なかなか作品を選ぶことができなかったんです。
そんなときにAIを活用すれば、その空間にベストな作品をリーズナブルに提供できる。「kAIga Maker」はそんなアイデアから生まれました。
「kAIga Maker」の技術を応用し、絵画だけでなく観葉植物やインテリア全般にも対応したAI提案サービス「nAIsou Maker(内装メーカー)」も開発中です。
個人向けの提供のほか、大量の部屋やスペースを持つホテルや病院、オフィスなどを持つ法人に対して効率的な装飾提案を行えるサービスを目指しています。
▶︎kAIga Maker(絵画メーカー)with norosi 公式WEBサイト
AIビジネスに興味を持ったきっかけは?
船越さん:そもそもAIに興味を持ったのは、高校時代アーチェリー部に所属していたとき、試合に勝ちたくて独学でAIシステムを作り始めたことがきっかけでした。
アーチェリーは最大で90m先にある的を狙う競技。練習では打つたびに双眼鏡で矢がどこに刺さったのか確認しなければならず、非効率的でした。
そこで用具に小さなカメラを取り付け、その映像から矢の刺さった位置をAIで判別、発射角度をフィードバックするシステムを作ったんです。
その結果県大会で優勝できるくらい上達しましたし、なによりプログラミングの面白さに気づくことができました。
船越さん:大学では本格的にAIやデータサイエンスを学びつつ、「学んだことを実社会で活かさないのはもったいない」という思いから、勉強と並行して自分でサービスを作るように。
最初は趣味の延長だったのですが、公開してみると反響があったり、収益を得られたりする中で、自然と「起業」という選択肢につながりました。
なので具体的に「起業をするぞ」と決意したわけではなく、趣味であるものづくりの延長線上にAIビジネスがあったという感覚です。
「kAIga Maker」の独自性はどんなところにありますか?
船越さん:「kAIga Maker」は既存の画像生成AIモデルをベースにしながら、自社で独自に開発したAIモデルも併用しているのが特徴です。
後者の独自モデルでは、部屋の写真から取得した色彩データや画像データに加え、お客様の会社情報や個人的な好みなども織り込みながら絵画を生成する仕組みを採用しています。
船越さん:部屋の空間デザインや企業イメージを総合的に解析し、より独自性の高い絵画を生み出せるサービスとなっており、この技術は現在特許を出願中です。
すでに何社かの協力を得て実証実験も行っており、今後は多様なニーズに応えられるようサービスを拡大し、幅広い分野への展開を目指していきたいと思っています。
船越さんの事業のモチベーションの源泉を教えてください。
船越さん:「自分の将来の仕事を自分で作りたい」というのが最大のモチベーションです。
私は今大学4年生で、来年には大学院に進学する予定。そして大学院修了後は就職せずに、自分の事業を継続したいと思っています。
もともとはプログラミング自体が楽しくて、趣味の延長線上としてサービスをいくつか立ち上げてきましたが、今後自分の事業で生計を立てるには、市場に広く受け入れられるスタートアップを目指す必要があります。
そのために自分の得意領域である開発だけではなく、これまでほとんど経験のなかった営業や広報についても本気で挑戦しています。
船越さん:最初は苦手意識もありましたが、展示会への参加や企業へのアプローチ・情報発信などの経験を重ねるうちに、その面白さや奥深さに気づくことができました。
本気で取り組めばどんな挑戦も楽しいし、そこから視野を広げることができるのだと今まさに実感しているところです。
大学院でも引き続き「AIと意思決定理論」について研究し、研究で学んだことを事業化するプロセスの中で、新たな価値を社会に実装していきたいです。