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マーケティングにおけるペルソナとは? 作成手順やAIを活用した設定方法を紹介

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ペルソナとは、商品やサービスを届ける理想の顧客像を一人の人物として描いたイメージのことです。

年齢や性別、職業だけでなく、価値観や日々の行動まで具体的にイメージすることで、顧客視点に立った戦略が立てやすくなります。

ここでは、ペルソナの定義やターゲットとの違い、作成の手順、生成AIを活用する方法まで、初めての方でもわかりやすく解説します。

ペルソナとは

ペルソナの例

ペルソナとは、マーケティング用語で商品やサービスを届けたい「お客さまのイメージ像」のこと。

自分たちのサービスを購入する人の、年齢や性別・家族構成・住まい・勤務先などを具体的に描いたイメージ像がペルソナです。

漠然としたターゲット層ではなく、一歩踏み込んだ詳細なペルソナを作ることで、誰に向けてサービスを届けるかが明確になり、ビジネスの成功率が高まります。

ペルソナとターゲットの違い

項目 ターゲット ペルソナ
定義 年齢・性別・職業などの大まかな顧客層 ターゲットをさらに具体化した、架空の一人の顧客像
具体性のレベル 「30代の女性」「子育て世代」など大ざっぱなイメージ 30歳の子育て中の主婦、仕事と家事の両立に悩む「佐藤花子さん」など、詳細な人物像
使い方 広告・キャンペーンの方向性を決める際に活用 メッセージや商品開発の方向性を決める際に活用
役割・目的 おおよその見込み顧客層を把握する 顧客の行動・価値観を具体的に理解し、戦略を立てる

ターゲットは、年齢や性別・職業などで大まかに分類した「想定する顧客層」を指します。

例えば「30代女性」「子育て世代」「シニア」といった分類が、大ざっぱなターゲットの典型例です。

一方ペルソナでは、このターゲットをさらに深く掘り下げ、まるで一人の実在するかのような人物像を作成します。

ペルソナを設定することで、その人の価値観や生活背景・行動パターンを想像しやすくなり、メッセージや商品の提案がより具体的で説得力のあるものになります。

ペルソナの具体例

ここでは「ノンアルコールビール」を購入するペルソナとして、30代後半の田中さんを考えてみましょう。

項目 内容
名前 田中 一さん
年齢・性別 30代後半、男性
職業 営業職、組織文化は体育会系色が強い
ライフスタイル 平日は仕事が忙しく、昼ごはんはコンビニ弁当で済ますことが多い。仕事後の飲み会は週に2〜3回ほど。
健康意識 最近疲れやすさを感じており、健康管理に気をつけている。平日の飲みの席では無理をせず、体調優先で楽しみたい。
休日の過ごし方 週末はランニングを趣味にしており、平日の疲れをリセットしたい。ジムや整体に行くことも。
よく見るメディアやSNS 海外のサッカー観戦ができるサブスク、男性向け健康系雑誌、Facebook、YouTube
ニーズ・課題 飲み会での飲酒量を減らしながらも、飲みの場の雰囲気を楽しみたい。

こうした具体的な人物像を設定すると、どのような商品特性を伝えるか、どんなメッセージを届けるかが明確になります。

ペルソナを設定する必要はある? ペルソナマーケティングのメリット

ペルソナは、顧客をより深く理解し、ビジネスを前に進めるために設定するものです。

生活背景や価値観、行動パターンなどを深く掘り下げたペルソナは、顧客視点に立ったマーケティング戦略を立てる際に立ち戻る基準点となります。

ユーザーに対する理解がより深まる

ペルソナを作成することで、ユーザー理解が深まり、顧客の本当のニーズや行動をより具体的にイメージできるようになります。

たとえば「仕事で忙しい30代の営業職・田中さん」が何に悩み、普段どんなメディアに触れているかまで想像できると、心に響くサービスの見せ方やキャッチコピーも考えやすくなります。

最初は自分以外の人の生活や感情を想像するのは難しく感じるかもしれませんが、実際に「顧客になってくれる人」を考えることで自分の思い込みから離れ、広く世の中に受け入れられるビジネスを立ち上げやすくなるでしょう。

ビジネスの説得力が高まる

ペルソナは、投資家や利害関係者に自分のビジネスを説明する際に、説得力を大きく引き上げます。

新規制の高いビジネスに取り組む場合、ターゲット像があいまいだと「そんなターゲットが市場にいるのか?」と問われることも。

しかし、顧客の隠れたニーズや生活シーンを捉えた具体的なペルソナがあると「この人に響くサービスを作る」という説得力が生まれ、周囲の納得感を得やすくなります。

社内で理想の顧客像が統一され、議論がスムーズに進む

「誰に向けてサービスを作るのか」という認識が社内でズレると、マーケティングや商品開発、営業活動など具体的な施策を考える際に、方向性がブレてしまいます。

具体的なペルソナがあると、統一された顧客像をもとに話し合えるため、目線合わせがスムーズになります。

ペルソナはもう古い? 新規事業でペルソナマーケティングが重要な理由

近年、顧客の価値観や行動パターンが多様化が進み、1つのペルソナ像だけではすべてのターゲット層をカバーしきれないケースも増えてきました。

たとえば、有料の動画配信サービスでは

  • 仕事終わりの電車でサクッとドラマを見たい人
  • 子どもにアニメを見せたい子育て世代
  • 家でリラックスしながらゆったり映画を楽しみたい人

など、さまざまなペルソナを作ることができます。

マーケティング業界ではこうした変化から「ペルソナはもう古いのではないか」といった意見も見られます。

しかし、新規事業を始める際の最初の一歩として、ペルソナは今もなお重要な指針になります。なぜなら、新しいコンセプトのサービスが、いきなり多くの人に受け入れられることはほぼないからです。

「このコンセプトを一番最初に受け入れてくれる人」としてペルソナを考え、顧客の立場に立ったアプローチを考えることが、事業のスタートダッシュを成功させる重要なポイントです。

ペルソナの作成手順

ペルソナを作成する際は、狙うべき顧客の全体像をしっかりと捉え、その人の生活や考え方を実際に調査することが重要です。

ここでは、その後のマーケティング施策を検討するときにも役立つ、ペルソナの作成方法を解説します。

STEP1|STP分析を用いて、狙うべきターゲットを明確にする

STP分析とは

  • セグメンテーション(Segmentation):市場を細分化する
  • ターゲティング(Targeting):狙う顧客層を決める
  • ポジショニング(Positioning):他の商品との違いをはっきりさせる

という考え方です。ペルソナを作る前に、「誰に向けた商品か」を明確にするためにSTP分析を活用します。

たとえばノンアルコール飲料の場合、性別や年齢に加えて、

  • 健康志向の人
  • 車を運転する人
  • 妊娠中・授乳中の女性
  • お酒が苦手な人

と、ニーズやライフスタイルの違いに応じて市場を細分化します(セグメンテーション)。

その中でも、どの層に一番製品が響くかを考えて、狙う顧客層を定めます(ターゲティング)。

本格的なペルソナ作りの前に、あらかじめSTP分析の「セグメンテーション」と「ターゲティング」を実施しておくと、深掘りするべきペルソナ像の輪郭が見えやすくなります。

STEP2|ペルソナ像を構築する情報を集める

リアルなペルソナ像を作成するために、情報集めを行いましょう。

顧客像が明確に定まっておらず、データが手元にないことも多い新規事業では、ペルソナ作りの一環としてユーザーインタビューを行うのがおすすめです。

想定するペルソナ像と近い人に話を聞くことで、自分の想像だけではなかなか見えてこない行動の背景や、隠れたニーズが見えてきます。

STEP3|収集した情報を整理して、ペルソナ像を書き出す

最後に、集めた情報を整理し、ペルソナを一人の人物としてまとめます。以下の観点でペルソナを整理するのがおすすめです。

  • 名前
  • 年齢・性別
  • 職業
  • 家族構成・ライフスタイル
  • 仕事やプライベートの価値観
  • 日々の行動パターン

よく見るメディアやSNSペルソナの意義はアウトプットそのものよりも、作成プロセスを通じて顧客の立場を深く理解できるようになることにあります。

このプロセスを経ることで、顧客の本音やニーズを具体的に想像できるようになり、思い込みにとらわれないマーケティング施策を立てられるようになります。

失敗も多い? ペルソナマーケティングの注意点


ペルソナマーケティングは誤ったやり方で取り組むと、作ったペルソナが現実の顧客と大きくずれてしまい、かえって逆効果になることがあります。

ここではペルソナマーケティングの注意点を具体的に紹介します。

売り手の理想や思い込みを捨てる

ペルソナを作るときに最も避けるべきなのが、情報が足りない部分があったときに、リサーチをせず自分の想像で埋めてしまうことです。

自分のサービスに思い入れがある人ほど、自社サービスの良さを信じるあまり、都合の良い理想像を作りがちです。

その結果、実際の顧客像とかけ離れてしまい、せっかく作ったペルソナが機能しなくなってしまいます。

ペルソナを作成する際は必ずユーザーインタビューなどの調査を実施し、他者の声を聞くことが重要です。

「自分が顧客を一番知っている」と過信しない

ペルソナ設定でありがちな失敗は、自分のこれまでの経験に偏った判断をしてしまうことです。

特に自分の悩みや体験から生まれたビジネスでは、「自分こそがペルソナだ」と考え、外の視点を取り入れないまま設定してしまうケースがあります。こうして作られたペルソナは、市場を反映していないものになりがちです。

さらに複数の視点が入っていないため、周囲の共感や納得感も得られず、ペルソナが形骸化してしまう原因になります。
ペルソナを作成するときは、チームで競合分析やユーザー調査を行い、客観的なデータを取り入れながら共通の知見を築く意識が重要です。

ターゲット層が実際にお金を払うかどうかを考慮する

理想のペルソナを追求するあまり、実際にお金を払う層を撮り逃さないようにしましょう。

ターゲット層が小さすぎたり、あるいは購買力がなかったりする層だと、ビジネスはうまくいきません。

市場ボリュームやユーザーが特定のシーンで「いくらまでなら払えるのか?」を確認し、サービスが本当に成立するかを検証するステップを設けることで、ペルソナの精度とビジネスの確実性を結びつけることができます。

定期的にペルソナの見直しをする

社会や人々の価値観は絶えず変化します。ペルソナは一度作れば終わりではなく、常に見直しが必要です。

たとえば車選びの価値観も、馬力重視の時代から、燃費や家族の快適さ重視へと変わってきました。ペルソナも社会の変化に合わせて変えていかないと、顧客像が現実とずれてしまいます。

一度決めたペルソナでも定期的に見直し、ギャップを感じたら柔軟に修正する姿勢が大切です。

生成AIを使ったペルソナの作成方法


本来、ペルソナ設定は綿密に行った方が精度が高まり、その後のビジネスも軌道に乗りやすくなります。

しかし「ユーザーに話を聞く時間がない」「施策を動かすために仮のペルソナが必要」など、ペルソナをじっくり作ることができないケースもあるでしょう。

そんなときは「Chat-GPT」や「Gemini」などの生成AIを活用することで、ペルソナ作成の負担を大きく減らすことができます。

STEP1|生成AIへの初期プロンプトを入力する

まずは、生成AIのチャット欄に、「優秀なマーケター」としてふるまうよう依頼するプロンプト(=生成AIへの命令文)を入力します。下記の文章をコピー&ペーストしましょう。

あなたは優秀なマーケターです。私と対話しながら情報を収集し、私が新しく作るプロダクトのペルソナを考えてください。

すると、AIからペルソナを設定するための質問が返ってきます。

質問に答えることで、AIがプロダクトの特徴を学習し、それをもとにペルソナを考えてくれます。

STEP2|AIの質問に答えながら情報を出す

AIから「どんな課題を解決するものか?」「どんな場面でこのプロダクトが使われるのか?」といった質問が出てくるので、一つずつ答えていきましょう。

自分の中でまだ決め切れていない部分も「現時点ではこう考えている」と答えればOKです。

このやり取りの中で、サービスの価値や顧客像が自然に整理されます。

STEP3|AIにまとめたペルソナ案を出させる

最後に、AIとの対話で集めた情報をAIにまとめてもらいます。

下記の文章をコピー&ペーストしましょう。

これまでのやりとりをもとに、1人のペルソナ像をまとめてください。

AIが文章化してくれたペルソナ案を見て、必要に応じて追加指示を出します。

「もっと詳しく」「ペルソナがその行動をしているときの感情を補足して」など、自分が納得できるまで調整しましょう。

絶対視はしない!生成AIを活用したペルソナ作りの注意点

生成AIを活用するとペルソナが簡単に作れますが、作ったペルソナはあくまで「仮説」であり、絶対的なものではありません。

AIが出した内容をそのまま信じ込むのではなく、必ずユーザーインタビューや実際のデータで裏付けを取ることが重要です。

生成AIのペルソナを叩き台として活かしつつ、ユーザーの声を聞くプロセスを踏むことがマーケティング成功の鍵となります。

まとめ

ペルソナはビジネスを顧客視点で考える大切な指針です。

作成時には自分の頭の中だけで整理するのではなく、ユーザーインタビューや市場データを活用して客観性を持たせましょう。

実際の顧客の声や行動に基づく検証を怠らないことが、商品やサービスの価値を正確に届けるポイントです。

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