【たびふぁん・西岡貴史】「経済に」旅のロングテールモデルをつくる
ちょっと未来の”あったらいいな”をみんなで作る、仲間集めのオープンコミュニティ「triven(トリブン)」。ソーシャルグッドのアイデアを持ったチャレンジャーが、どのようにtrivenを活用し、スタートアップに繋げていったか、そのストーリーを紹介します。(インタビュアー:trivenコミュニティマネージャー岩田かなみ)
プロフィール
西岡 貴史
株式会社たびふぁん
1999年生まれ、神奈川県育ち。大学在学中に、リゾートワーケーションのSaaS企業の立ち上げに参加しMDから旅行業責任者まで歴任。在学中に、株式会社たびふぁんを創業。リリース3日で登録者数約3,000人、PR動画のPV数50万PVを達成した温泉レコメンドサービス「温泉botくん」を運営。趣味は国内旅行と温泉巡りで、100軒以上の宿に宿泊をする。
▶︎プロジェクトページ:マイクロインフルエンサーによる観光資源の創出と発信 たびふぁんin神戸市
▶︎コーポレートサイト:株式会社たびふぁん
何もないことに価値があるー日本を再発見する
岩田:よろしくお願いします。西岡さんは先日開催されたtriven主催のピッチイベントで最年少でしたね。そもそもの起業のきっかけを教えてください。
西岡さん:元々僕は旅行が好きで西日本によく行っていました。ある時東北に行く機会があり、僕の中で”何もないだろう”と思って行ったんです。こういう話って結論は「行ったら○○があったんですよ」ってなるじゃないですか!そしたら、本当に何にもなかったんです。
岩田:まさかの!!
西岡さん:でも、そこから「何もないところの方が何かあるんじゃないか?」と思うようになりました。
何もないと思っていたけど、人やモノじゃない価値がある。綺麗ごとかもしれないですが、そうした魅力のある地域は日本にはたくさんあって、日本はまだあと2,3周は楽しむことができると思っています。そこから日本を再発見するというテーマで活動を始めました。
岩田:日本を再発見するとは、どういうことでしょうか?
西岡さん:例えば僕は、神戸にある有馬温泉のポテンシャルが大きいと思います。有馬温泉は関西の人にとっては近くの温泉っていう感じだと思うんですが、有馬温泉の魅力は同じ神戸市内の北区にあり、三宮から電車でたった30分であの雰囲気を味わえるというところです。
東京にとっての箱根みたいな存在かもしれませんが、新宿から90分で行けるというのは、ロマンスカーが速いのであって、距離として近くはない。そういうところって日本にはいっぱいあるし、知ってもらいたいと思いました。
岩田:神戸在住の私からすると有馬温泉って近すぎて気付かなかったのですが、外の視点から魅力を教えていただけてすごく新鮮でした。それが日本を再発見するということなんですね。
西岡さん:だから地方創生のためというより、たびふぁんは旅を楽しむためのサービスとして、旅行を3倍くらい楽しむということを伝えていきたいです。
旅の魅力とは?
岩田:あくまで旅を楽しむことで地方が豊かになるということですね。そんな西岡さんが考える旅の魅力とは?
西岡さん:旅の魅力は2つあります。まず1つ目が、旅は無形なのにみんな目をキラキラさせる体験です。トラベルという言葉の語源は「トラバーユ(Travail)=苦労」という意味だったんです。
旅行って、移動費や宿代がかかるし、場所によっては、4時間歩いたり、山を登ったり。でも、旅っていう魔法がかかれば楽しくなるんです。同じお金を払ったとしてもアップルウォッチなら残るのに。”わざわざお金を払って、疲れに行っているのに楽しいってなんだろう?”って。
もう1つが老若男女問わず愛されることです。様々な年代で、旅が趣味という人が多いです。人間の普遍的な楽しみなんだと考えています。
岩田:私もちょうど先月鳥取でサイクリングをしました。疲れたんですけど、山の上の景色が綺麗で感動しました。これは、人間的な普遍的な欲求かもしれないですね。
西岡さん:旅の魅力として「非日常」というキーワードもありますが、非日常の要素を突き詰めていくと結局結論は出なくて、意外と言語化できないんです。例えば、行ったことがない場所が”非日常”だとしたら東京の中でも行ったことがない場所はたくさんあるし、美味しいものも食べられる。
でも、旅と同じ”非日常”に置き換えられるかというと違う。面白さが言語化できないのに「旅が好き」っていうことが、僕はなんか楽しい。
旅のロングテールという旅行者目線の新たなビジネスモデルを創る
岩田:言語化できないからこそロマンがあって追いかけたくなるのかもしれません!実際にビジネスにするにあたっての大変なところを教えて下さい。
西岡さん:今までの旅行会社のモデルは、ほとんどが手数料です。手数料をとるということは、薄利多売につながりやすいということです。
実は大手旅行会社さんに内定をもらっておりました。大手なら、ノウハウを持っているので、ニッチなところを再発見するということができるだろうと思っていたのですが、旅行会社さんは手数料ビジネスから引かないんですよね。旅のロングテールというニッチなところにお客さんを送り続けるという経済概念が成り立つのであれば、旅行業界にも新しい選択肢が増え、もっと旅行が楽しくなると思いました。
その昔、手数料というビジネスモデルが始まり、それがこんなに根付いてしまっているので、今やり始めないともっともっと根付いてしまう。時代は早く変わるので、結局この概念がなくなってしまう。
岩田:旅のロングテールというビジネスは業界へのチャレンジなんですね。
西岡さん:ブッキングする人が大量にいて、早く埋めよう、というビジネスは旅行者さんにとって良い意思決定になっていると思えないんです。
思っていたのとは違ったと、旅先でガッカリした経験をされたことが1回はあると思います。それは旅行者だけでなく社会や業界にとっても大きな機会損失だと考えています。旅行者目線でサービスを作ることができない、特に大きい業者だと難しいモデルです。
岩田:旅好きの西岡さんだからこそ、徹底して旅行者目線のサービスをつくりたいという想いが伝わりました。そこで就職せず、起業したんですね。
西岡さん:今でも起業したというよりは、自分のやりたいことをやっているという感じです。
”なんでインフルエンサーじゃダメなの?”と聞かれるんですけど、インフルエンサーになりたい人を集めて一緒にやる方が楽しい世界を作れるんじゃないかと思いました。だから起業がいいなって。チームみたいなもんですね。
岩田:マイクロインフルエンサーも含めたチームでそれぞれの行きたい方向へ向かう。それまで活動していたたびふぁんを団体から法人化して起業するということで、ターニングポイントはありましたか?
西岡さん:在学中にほぼ、見切りでスタートしてしまい法人化ということもあるのでメンバーとビジョンの見え方が微妙に違いました。だから「”旅”って言っているのに全然楽しくないじゃないか!」になりました。
そこで、ビジョンをあらためて見直し「本当に実現したいこと」を考えるということをしました。
僕は昔はこれって生産性が少ないんだと思ってやっていなかったんですが、大切さに気付けました。
岩田:ビジョンが共通してチームが強くなったんですね。これからの事業で不安などはありますか?
西岡さん:業界への理解です。マイクロインフルエンサーの本質は昔からの井戸端会議の口コミのような繋がりみたいなものです。知っている人に聞いたことは信ぴょう性があるということです。
でも、「それは広告でしょ」って言われてしまう。このビジネスについて、みんな口を揃えて「できない」っていいます。でも、「やってみなきゃわからない」という世界。「できないだろう」って言われていることを出来る方法を考えて、やってみるということが大事なんです。それに「今やるのが1番面白い」と思っているだけなんですけど、業界には新しい概念がそもそも存在しない。だから、広告になっちゃう。
岩田:業界がこれまで積み重ねてきた手数料ビジネスの壁が厚いんですね…。実際に導入されている事例もあると思うんですけど、そういった自治体さんも最初は「わからない」からのスタートだったんですか?
西岡さん:基本そういったところは最初から共通して、わかってくれているんですよ。逆に「わからない」から始まるところはないんです。説明してわかる領域でもないかもしれないんです。
岩田:直感的に「なんか面白そうだからやってみよう」っていうくらいのところなんですかね。ぜひ、trivenを通じて色んな自治体さんや地域と繋がって、事例を増やしていただければと思います。
trivenは自治体や仲間とアイディアベースでつながれる
岩田:trivenはどのように活用されましたか?
西岡さん:僕は実証実験がしたかったので、trivenが主催する渋谷区と神戸市の共催イベント『NOROSIスタートアップ』を見て参加をしました。
trivenはアイディアベースで色んな方がいるのが面白いです!僕はNOROSIのイベントで出会ったお茶の活動をされている美心LABさんと、旅館でお茶を一緒に提供する取り組みをすることになりました。
岩田:旅館xお茶の面白い取り組みが始まりそうですね!
西岡さん:アイディアで話せるのが良いです。また、オンラインとオフラインがあるので、美心LABさんがイベントの時に商品を実際に持ってこられたので「これは良い!」ってなりました。
岩田:オンラインとオフラインでアイディアベースでつながって、動き始めるというのが可能になるという理想の形で活用していただけて嬉しいです。
西岡さん:そうですね。色んなプログラムに応募しましたが、多くは企画書を提案しないといけないので、アイディアベースで行政とつながれるのが面白いです。実証実験をされない方でもアイディアを神戸市や渋谷区と壁打ちすることで、プロジェクトが前に進むかもしれません。
それに、起業するってなると「そんなの無理でしょ」と否定されることが多いので、アイディアに対して「面白いね」って言う仲間がいる。
岩田:まさにtrivenでは、アイディアを持った人が仲間と出会うことで1歩を踏み出す応援がしていきたいと思っているので、コミュニティづくりを頑張ります。最後に西岡さんの次の目標やこれからの展望を教えてください!
西岡さん:サービスのハード面だけではなく、ソフト面としては、より「コミュニティ」づくりを重視して、運営やユーザー間のコミュニケーションを強化し、温泉や国内旅行のファンを増やしていきます。また、行政との連携も増やしていき地域活性化や地方創生へ貢献していきます。
旅をワクワクさせる事業を通じて今より少しだけ旅を楽しく(tabi-fun)します。
岩田:ありがとうございました!
内容は取材当時のものです。現在のサービス名・事業内容・活動状況は同プロジェクトのホームページ・SNSなどをご参照ください。