学生こそ起業に挑戦しよう! キャリア上のメリットや成功例を解説
近年、学生のうちから自分のビジネスを持つ「学生起業家」が増えています。
まだ起業していない人でも「いつかは起業してみたい」「学生のうちから自分でお金を稼ぐスキルを身につけたい」と考えている人は多いのではないでしょうか?
本記事では今回は100名以上のスタートアップ立ち上げ支援を行ってきたスタートアップスタジオ「norosi(ノロシ)」の知見をもとに、学生起業のメリット・デメリットや成功のポイントを解説します。
この記事の目次
起業やスタートアップビジネスに関心がある方はnorosiへ
学生起業のメリット
ここでは学生起業のメリットを6つ解説します。
大学の支援制度を活用できる
2022年に政府が発表した「スタートアップ育成5か年計画」では、スタートアップの担い手となる人材を育成する仕組みを作るよう自治体や大学に要請しています。
その後押しもあり、近年は起業支援に力をいれる大学が増加しています。
学内でビジネスコンテストを開催したり、起業支援を行う会社とともに起業家育成プログラムを実施したりなど、起業しやすい環境が非常に整っている状況です。
スタートアップスタジオnorosiでも一橋大学、早稲田大学、明治大学、東京都立大学などの大学と連携し、ビジネスコンテストの運営サポートを行っています。
そのため、今は学生のうちから事業開発のプロによるフィードバックを受けやすくなっています。
さらに大学発ベンチャーの創出に力を入れる一部の大学では、学生の起業家が自由に使えるオフィススペースを提供し、学内のベンチャーキャピタルを通じて優れた学生起業家に対して資金提供を行うことも。
上記のような大学の支援制度を活用することで、知識やノウハウ、資金面での支援を無料、または安価で享受することが可能です。
失敗してもリスクが少ない
学生起業は、社会人からの起業に比べるとリスクが小さいです。
ほとんどの場合、学生は親の扶養下にあるため、生活費や学費の心配がない状況で起業に挑戦できます。万が一失敗しても、親の支えや新卒採用という受け皿があるためダメージは限定的です。
一方、社会人は自身や家族の生活費を日々の労働でまかなっていることが多いです。退職後、起業に失敗してしまうと、生活が立ち行かなくなるリスクが高まります。
学生は社会人と比較するとキャリアや金銭面でのリスクが小さいため、思い切ったチャレンジがしやすいと言えるでしょう。
早いうちからキャリアのアドバンテージを積める
経営ノウハウや人脈、課題解決力など、起業によって身につけられるスキルは様々な職種・業界で役に立ちます。
学生起業をすることで、他の学生が本格的に社会に出る前から実践的なビジネス経験を積めるため、就職活動の際に他の学生との差別化を図ることができます。
さらに新卒採用を行う企業の中には、こうした起業の経験を高く評価するところも多いです。
スタートアップスタジオnorosiでも、大学卒業直前に共同創業を行った企業の社長が就職活動を有利に進め、会社に勤めながら社長業に取り組んでいる事例もあります。
学生のうちからビジネスに挑戦することは、その後のキャリアという観点からも有利に働きやすくなります。
成果を上げたときに印象に残りやすい
学生の起業家は増えているものの、全体のビジネス人口と比較するとまだまだ人数が少ないです。そのため卓越した成果をあげると注目を集めやすいというメリットがあります。
例えばForbes JAPANでは「30 UNDER 30(日本発の『世界を変える30歳未満』30人)」として、20代の起業家や高いパフォーマンスを発揮する若手人材を取り上げています。
若いうちから市場にインパクトを与えれば、メディアからの取材の増加や業界内での評価の高まりが期待でき、大きなアドバンテージになるでしょう。
時間がある
学生は社会人に比べると、起業に時間を割きやすいです。
授業がない長期休暇には集中して事業のブラッシュアップに取り組んだり、綿密な市場リサーチをしたりしやすくなります。
また通常の学期中でも、授業の合間や週末など、自由な時間が作りやすいため制約は比較的少ないでしょう。
こうした時間的余裕を生かせば、アイデア出しからビジネスプランの策定、製品開発、営業活動といった起業プロセスを着実に進められます。
学生のニーズをヒアリングしやすい
学生起業のメリットとして、同年代の学生とのつながりを活かし、若者の潜在的なニーズを手軽にリサーチできる点があります。
現在の学生は「Z世代」とも呼ばれており、SNSやデジタルデバイスを前提にした新たな価値観と消費スタイルを確立しています。
そんな彼らのニーズを的確に捉えられれば、社会人の起業家ではなかなか作ることができない独自のビジネスモデルや強みを築けるかもしれません。
学生起業のデメリット
ここでは学生起業のデメリットを4つ解説します。
学業やサークルとの両立が難しい
学生起業を行うと、学業やサークル活動と両立するのが難しくなります。
ビジネスに集中しすぎてしまうと成績が下がり、留年のリスクも高まります。一方で学業やサークル活動に気をとられた結果、ビジネスが手つかずになってしまうこともあるでしょう。
特に起業の立ち上げは時間がかかることも多く、うまくタイムマネジメントをしないと何かしらを犠牲にする可能性が高くなります。
また事業に一生懸命になるあまり、大学の友人と疎遠になってしまうということもあるかもしれません。
学生起業家が学業やサークル活動を両立するには、周囲からの理解を得ることが不可欠です。
教授やサークル仲間とコミュニケーションを取りながら、学習スケジュールや自分の役割を調整してもらうのがおすすめです。
社会的信用を得にくい
社会人からの起業と比較すると、学生起業によって立ち上がった会社は社会的な信用を得にくい傾向があります。
「年齢が若く、経験も浅いから」という理由で軽視されたり、相手にされなかったりするケースも少なくありません。その結果、取引先の開拓やビジネスパートナーの確保が難航することもあります。
このようなリスクを回避するための対策として「ビジネスで一定の成果を残しており、かつ学生起業に理解がある大人」をチームに参画させる方法があります。
「経営陣にビジネス経験の深い人物がいる」ということも、企業の信頼性を上げる一つの材料になるからです。
一方でビジネスパーソンの中には「若い人を応援したい」という心持ちで接してくれる人がいることも事実。
信頼を獲得するための振る舞いを身につけ、具体的かつ確実性の高いビジネスプランを提示することを前提に、フラットな目線で関わってくれる人を探し続けるマインドを持つようにしましょう。
資金調達が行いづらい
一般的に親の扶養下にある学生は、信用情報が乏しいため、銀行からの融資を受けるのは難しいと言われています。
また社会人とは異なり起業資金を貯めるのも難しいことから、資金の問題が起こりがちです。
そのため学生起業では、ビジネスコンテストの賞金やクラウドファンディングなどが重要な資金確保の手段となります。
事業アイデアをブラッシュアップしたり、協力者のネットワークを広げたりする観点からも、積極的にビジネスコンテストに挑戦するのがおすすめです。
また多くの資金が必要なビジネスでは、学内のベンチャーキャピタルと連携して資金調達を行うこともあります。
ビジネスに必要な知識やネットワークを自ら取りに行く必要がある
学生は社会人と比べ、ビジネスに必要な基礎知識やスキルが不足しがちです。企業での研修を受けていない分、ビジネスマナーや業務知識を手探りで学ぶ必要があります。
また、社会人の起業では、会社で働く中で構築してきたスキルや人脈を活かしながらビジネスをすることが多いです。
一方で学生にはそういった後ろ盾がないので、一から情報収集を始めなければいけないということも多いでしょう。
そうした知識やネットワークの不足を補うためにも、インターンシップやビジネス系のイベントへ積極的に参加し、必要な知識やスキルを身につけましょう。
書籍やインターネットで勉強するだけでなく、実際に人に会うことで、必要な知識やスキルを効率的に学ぶことができます。
学生起業は相談に乗ってくれる無料窓口を探そう
中小企業庁「日本の起業環境及び潜在的起業家に関する調査」によると、起業家の相談相手は「家族・親戚」が40.8%で最も多く、次に「友人・知人」「起業のパートナー」と続きます。
「学生起業をしたいけど、周りに相談できる人がいない」という場合は、まずは自分が通っている学校や、住んでいる自治体の支援窓口を訪問してみましょう。
学生起業の場合、少しでも事業にかかるお金は抑えたいもの。無料で利用できる相談機関をうまく活用するのがおすすめです。
学生起業の実態
日本政策金融公庫が行った「2020年度新規開業実態調査」によると、日本の開業時の年齢開業時の平均年齢は43.7歳。
30〜40代が起業に挑戦するボリュームゾーンを占める一方、29歳以下の人の割合はわずか4.8%と非常に少ない割合となっています。
しかし近年は大企業志向ではない学生の増加や、大学によるアントレプレナーシップ(起業家精神)教育が後押しとなり、起業に興味を持つ学生も増加傾向にあります。
ここでは日本の学生における起業の実態を解説します。
起業に興味がある学生は3〜4割
ベンチャーキャピタルファンドTHE SEEDの調査によると、42.0%の学生が「起業に興味あり」と回答。
また大学生向け学習管理SNSを提供する株式会社ペンマークの調査でも、33.1%の学生が「事業規模にかかわらず、自分で事業を起こしたい」と回答しており、学生の3〜4割が自分の事業を持つことを検討していることがわかります。
終身雇用の崩壊により、複数の転職を経ながら自分のキャリアを作ることが当たり前になっている今、新たなキャリアの選択肢として「自分で会社を起こすこと」が注目されているようです。
起業に興味がある人のうち、実際に学生起業の準備をしているのは14.2%
株式会社ペンマークの調査によると「起業に関心がある」と回答した学生のうち、「すでに起業している」「起業準備中」と回答した人は14.2%でした。
また起業する場合の事業形態を聞くと「もうすでに市場やビジネスモデルが確立したスモールビジネスがしたい」という回答が最も高い割合を占めていました。
お金を稼ぐ手段として、もうすでに利益が出せることが確実で、かつ取り組むハードルやリスクが低いスモールビジネスに着手したいという人が多いことがわかります。
一方でスモールビジネスではなく「急成長し、社会を大きく変えるポテンシャルのあるスタートアップビジネスに挑戦したい」という人も一定数いるようです。
また「起業準備中」と回答した人に具体的な起業準備のアクションを聞くと、「経営者の知人・友人に相談する」「講座やセミナーに参加する」など、起業の知見がある人への情報収集が挙がりました。
学生主体の起業コミュニティも増加傾向
学生の起業志向の高まりとともに、学生起業を支えるコミュニティも全国に広がっています。
株式会社ガイアックスの調査によると、大学・高専・高校などにある学生の起業部・サークル・起業コミュニティ(以下、起業部)の数は2023年時点で全国49団体に。2018年比で約210%増加していることがわかりました。
この調査からも、起業という道に興味がある人が増えており、「起業」という選択肢が学生にとって決して珍しいものではなくなってきていると言えるでしょう。
学生起業の事例
ここでは学生起業から生まれた事業の事例として、スタートアップスタジオ「norosi」が支援をしている学生発のスタートアップ2社を紹介します。
株式会社たびふぁん|西岡 貴史さん
西岡 貴史さんは、大学在学中の2021年に株式会社たびふぁんを創業した学生起業家です。
日本初の「LINEで使える温泉レコメンドサービス」温泉botくんを企画・運営するほか、観光地の自治体や大手企業と連携した観光地のプロデュース企画・プロモーション事業など「観光」を軸に事業を展開しています。
趣味の旅行がきっかけで起業を志した西岡さん。事業ターゲットとなる「観光地の宿泊施設オーナー」に関するリアルなニーズを探るため、西日本にある様々な宿泊施設を2週間かけて回ったと言います。
こうした時間のかかる定性リサーチは、サラリーマンの方が働きながら行うのは難しく、また外部の調査会社に委託するとコストもかかるもの。
西岡さんは学生のメリットである「時間」を活かし、自分の足で一次情報を探った結果、観光業界の課題やニーズを高い解像度で捉えられるようになったと言えるでしょう。
株式会社モクジヤ|鈴木 粋さん
鈴木 粋さんは2023年、大学在学中に株式会モクジヤを設立した学生起業家です。
「学びを取り巻く社会課題を解決し、挑戦し続けられる世界をつくる。」というミッションのもと、「教育」と「お金」に関わる様々なサービス・メディアを作っています。
鈴木さんが大切にしているのは、素早くプロトタイプを作り、フィードバックを得て、高速で仮説検証を繰り返すこと。
そして仮説検証のスピードを保つという観点から見ると、サービスのターゲットになりうる学生が周囲にいることは大きなメリットと言えそうです。
学生起業を成功させるポイント
スタートアップスタジオ「norosi」では事業立ち上げ・法人設立までのステップを「起業クエスト」という形でまとめ、各ステージにおいてつまづきやすいポイントをサポートしています。
ここでは過去100名以上の起業希望者の方を支援した経験をもとに、「学生起業」に特化して成功のポイントを解説します。
今後、norosi pressでは起業クエストの詳細をさらにわかりやすく紹介したいと思うので、もうしばらくお待ちください
ビジネスアイデアのブラッシュアップから始める
学生起業を行う際は、ビジネスアイデアのブラッシュアップから始めましょう。
構想が明確に固まっていない段階で投資を伴うアクションをとってしまうと、せっかくの事業資金が無駄になってしまう可能性があります。
初期段階はなるべくリスクを少なくする観点から、無料でできる範囲の市場調査やビジネスモデルの磨き込み、最低限のプロトタイプ作成を行いましょう。
その際、ビジネスモデルキャンバス(BMC)などのフレームワークを活用すれば、ビジネスの全体像や構成要素間の関係性を可視化でき、漏れや矛盾点を見つけやすくなります。
事業のビジネスモデルキャンバスを作成し、自分のビジネスモデルを繰り返し見直すことで、費用をかけずともビジネスモデルの矛盾点や立ち上げを阻害する要因が見えてきます。
またビジネスコンテストに出場すれば、審査員からメンターなどのフィードバックを得ながらビジネスモデルの改善を重ねることができます。
最低限の資金を用意して、スモールスタートから始める
学生起業は資金面での制約が大きいため、小規模からスタートするのがおすすめです。
まずは少額の自己資金やクラウドファンディング、ビジネスコンテストの賞金などを活用し、小規模な事業化に挑戦しましょう。
特に技術領域のスタートアップでは高額な初期投資が必要になりがちです。
しかしプロトタイプの開発といった小規模な実験から始めることで、リスクを最小限に抑えつつ事業化の実現可能性を探ることができます。
インターンシップに参加してみる
学生起業家がビジネスノウハウを学ぶために、企業の長期インターンシップに参加するのも良いでしょう。
インターンシップを選ぶ際は、その会社の事業紹介や採用選考が目的となっているものではなく、半年〜数年単位で実務経験を積めるインターンシップを探しましょう。
特にベンチャーやスタートアップの長期インターンは、起業に必要な知識やマインドを身につけるのに役立つはずです。
大学の支援を活用する
大学が提供する起業支援制度を上手く活用することも、学生起業を成功させる大きなポイントです。
起業家育成プログラムやビジネスプランコンテストへの参加を行うことで、ビジネスの勘所を学ぶことができ、事業の成功確率が高まります。
またこれらのイベントで優秀な成績を収めれば、事業面で支援やアドバイスをしてくれる人に出会う可能性も上がるでしょう。
まずは自分の学校にどんな支援があるか確認し、積極的に参加してください。
起業イベントに積極的に参加してみる
起業イベントやセミナー、交流会への参加も非常に重要です。
ビジネスに関する知見を得られるのはもちろんのこと、参加者との交流の中で自分のビジネスアイデアを議論したり、協力者やパートナーを見つけたりする機会も得られます。
そうした出会いが事業の大きな転機を生むきっかけにもつながるでしょう。
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