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先人の言葉を起業の原動力に!「創業者オタク」鈴木粋さんが厳選するおすすめの起業本

「どうやって起業に踏み出せばいいのか」
「成功するために必要なものは?」

など、はじめての起業は誰もが不安を抱えるもの。起業で迷った時には起業に関する本を読んでみるのがおすすめです。

経営や起業に関する基本的な知識を学べるだけではなく、起業家の人生(起業ストーリー)を辿ることでモチベーションの向上にもつながります。

株式会社モクジヤの代表・鈴木粋さんは、読書を通して得た知見を武器に事業立ち上げを行いながら、「創業者オタク」として様々な企業のリーダーを追いかけてきました。

「先人の知恵が詰まっている『起業本』は読み返すたびに新しい発見がある」と語る鈴木さんにおすすめの起業本を伺います。

プロフィール

鈴木粋さん

鈴木 粋

2000年京都生まれ。創業者オタク。2023年8月株式会社モクジヤ設立、奨学金制度・業界の改革に取り組む。多種多様な会社・組織の創業者・創設者の生い立ちを発信するロールモデルメディア「創業者図鑑『モクジヤ』」を運営。

創業者の言葉は「不屈の精神」に満ちている

ーー起業家へのおすすめ本を伺う前に、鈴木さんが「創業者オタク」を名乗り始めたきっかけを教えていただけますか?

 鈴木さん:そもそものきっかけはバイト探しでした。

大学生のときに知人がニトリでバイトしていて、「ニトリで働くのもいいかも」とSNSや動画サイトで検索していると、ニトリの創業者・似鳥昭雄さんのエピソードがレコメンドされるようになって。

似鳥さんのエピソードに触れるうちに「面白い人だな」「大きい会社を創業する人ってどんな人なんだろう?」と興味を持つようになりました。

そこから似鳥さんの書籍を集めたり、「ニトリイズムを体感したい」とニトリで働き始めたり……。創業者オタクというよりは似鳥社長のファンとして、推し活を開始しました(笑)。

ーー元々はニトリの創業者の方のファンだったのですね。

 鈴木さん:はい、3年間ニトリで働いていました。実は勤務中、偶然似鳥さんとお会いしたこともあるんですよ。

舞い上がりすぎてどんな話をしたか半分くらい覚えていないのですが、当時から「起業したい」と思っていたので、その時考えていた事業アイデアを話してフィードバックをいただきました。

「とにかく目の前のお客さんを見なさい。事業の最初期から利益を気にしなくてもいい。目の前のお客さんに寄り添いなさい」と言っていただいたことが今でも心に残っています。

似鳥さんの座右の銘に「先客後利」という言葉があります。「お客様の満足が先で、利益は後」という意味なのですが、それを噛み砕いてお話いただいたのはとても得難い経験でした。

またその時にいただいたサインは今も常に机のそばに置いていて、毎日パワーをもらっています。

実際に似鳥さんの人となりに触れて「創業者ってこんなに面白いや!」と気づいてから、様々な企業・組織の創業者の生い立ちを追いかけるようになりました。

ーー起業家としても、創業者オタクとしてもメモリアルなエピソードですね。鈴木さんが感じる創業者たちの魅力を教えてください。

 鈴木さん:創業者の生い立ちや創業エピソードを深掘りすると、どこかで挫折や失敗を経験している人が非常に多いことが分かります。

でも彼らはどんな状況でも諦めず、立ち上がり続けます。そういった姿勢・生き様に触れると心が震えますし、自分も勇気をもらえるんです。

ーー鈴木さんにとって「創業者」はビジネス、ひいては人生のロールモデル的な存在なのですね。創業者オタクとして、現在はどんな活動をしているのでしょうか。

 鈴木さん:起業・創業関連のイベントのモデレーターを務めたり、「創業者図鑑『モクジヤ』」というサイトを運営したりしています。

「モクジヤ」は様々な会社・組織の創業者・創設者の生い立ちをポップなイラストで発信するロールモデルメディアで、イラストは僕が描いています。

「創業者」と聞くと自分とは遠い存在、自分とは接点・共通点がない存在など、若い年代の人からすると少し距離があるイメージを持たれがちです。

しかし実際にお会いすると、創業者は様々なバックグラウンドを持った面白い方々が多く、併せて同じ人間であることもよく分かります。

そういった創業者の魅力を周りの友達にも伝えたい!という思いで、創業者の方の生い立ちを根掘り葉掘り取材させてもらっています。

おすすめの起業本1:経営者の心構えが学べる本

ーーおすすめの起業本1冊目を教えてください。

 鈴木さん:早速似鳥さんの著作なのですが(笑)、僕が繰り返し読んでいるのが「リーダーが育つ55の智慧」という本です。

ニトリという大企業を数十年経営してきた似鳥さんの経験を踏まえて、会社を作り、大きくしていく上でリーダーはロマンをどう語るべきか、チームを動かしていけば良いのかなど、事業を進めていく上での基本を語ってくれています。

ーーどんな人におすすめですか?

 鈴木さん:起業したての人が経営者としての「ぶれない軸」を作るときにも、この本は指針になります。

また経営や事業の中で迷いそうな時に、本当に大切なものを思い出させてくれる本なので、折に触れて何度も読み返すような読み方もおすすめです。

自分はまだまだ起業家としても端くれ者ですが、会社の経営について方針を考える立場です。周りから異なる意見を言われたり、失敗したりした時など、不安で気持ちが揺らいでしまうことがどうしてもあります。

そんな時にこの本を読むと、「やっぱりこれが大切だよな」と立ち返ることができるんです。

ーーこの本から鈴木さんが影響を受けた知見などはありますか?

 鈴木さん:似鳥さんはミッションという言葉を使わず、「ロマン」というキーワードを使っているんです。

ミッションだと「会社として遂行しなければいけないこと」というイメージが先行しますが、ロマンという言葉にはワクワク感がありますよね。

似鳥さん自身も「ロマンを語ろう、好奇心やワクワクする気持ちを大切にしよう」という考えが根底にあると語っています。

モクジヤのコーポレートサイトでもミッションではなくあえて「ロマン」という言葉を使っています。完全に似鳥さんの影響ですね。

おすすめの起業本2:思考力・発想力を飛躍させる本

ーー2冊目のおすすめ起業本もお願いします。

 鈴木さん:「発想力を鍛える33の思考実験」という、哲学者や心理学者たちが行ってきた思考実験を33個紹介している本です。

ビジネス書ではないのですが、起業家として必要な「発想の幅」を広げるのに役立ちます。

男が沼のあたりを歩いていると2つの雷が落ち、1つ目の雷で男は死亡、2つ目の雷で男そっくりの男が作られた。男と作られた男は同一人物かーー。

こういった世界的に行われている思考実験の例がいくつも紹介されています。

ーー面白い問いかけがたくさんあって、思考のトレーニングになりそうです。鈴木さんはどんなときにこの本を読みますか?

 鈴木さん:例えば起業家の方とビジネスの話をした際に、印象に残った言葉や気になる考え方に触れることがありますよね。

そんなときにこの本を開き「あの言葉はどう解釈できるのか」といった思索の時間を作ると、発想の幅や考え方の柔軟性が広がる感じがします。

「今回聞いた話はこの思考実験に当てはめるとどうなるだろう」「あの話とこの思考実験には共通点があるのだろうか」と考えを巡らすことで、自分の思考パターンが深まり、独特な持ち味に持つようになると思います。

そうすると世の中の見え方が少し変わったり、自分の中で様々な切り口で物事を解釈できるようになったりするはずです。

また事業アイデアを考えるときも、思考実験が役に立つこともあるんですよ。日常にはなかなかない発想に触れられる本だからこそ、アイデアの刺激やスパイスになります。

ーー「ビジネス書」から学ぶのではなく、哲学や心理学からもビジネスのことが学べるんですね。

 鈴木さん:哲学や心理学は人間の根幹に関わる学問だからこそ、ビジネスシーンにも役立つのだと思います。

例えば仕事中に精神的にダメージを受けた時にも、心理学の知識が役に立ったりします。

「なぜ人は精神的な負荷を感じるのだろう」というメカニズムを理解しているだけで、自分を客観的に見れるようになるんです。

おすすめの起業本3:初心者必読の「起業の技術書」

ーー続いて3冊目のおすすめをお願いします。

 鈴木さん:「リーン・スタートアップ」という、起業するときや事業を始める人たちの必読書的な本です。

僕自身もそうなのですが、初めて事業を作る人はどうしても自分の事業に夢や理想を詰め込みすぎてしまいます。

大きな夢を胸に秘めておくのはもちろん良いことですが、夢が膨らめば膨らむほど、今目の前の第一歩を踏み出すときに「何をすべきか分からない」という状況に陥ってしまいがちです。

一方この「リーン・スタートアップ」は「余分な部分を削ぎ落として、いかに無駄のない起業を実現するか」に焦点を当てた本です。

課題の核心に迫った事業を最小限のコストで始める方法を、様々な知識や事例を挙げながら紹介しています。

地に足のついたビジネスをするためのエッセンスを凝縮しているので、大きなビジョンを描きがちな起業家ほど読んでほしいですね。

ーー1冊目に紹介いただいた「リーダーが育つ55の智慧」ではロマンの重要性をお話ししてましたが、この「リーン・スタートアップ」はロマンを現実に落とし込む方法を教えてくれるのですね。

 鈴木さん:おっしゃる通りです。失敗事例や失敗の原因も分かりやすく簡潔に書かれていますし、起業・スタートアップ界隈ではかなり重宝されている本だと思います。

おすすめの起業本4:女性起業家が書いた「三方よし」を体現する本

ーー4冊目、最後のおすすめ本を教えてください。

 鈴木さん:「売り上げを、減らそう。」という、国産牛ステーキ丼専門店「佰食屋」店主である中村朱美さんが書いた本です。

「佰食屋」はその名の通り、「どんなに売れても1日100食限定しか売らない」という一風変わったルールを設けているお店で、「お客様も社員も幸せにする」という考えのもと運営されています。

「お客さんに高い価値を提供し、適正価格で対価をいただく。社員に対しても時間外労働なしで適正な対価を支払う」という経営を実現した事例を学べます。

読み進めるうちに「売り上げは増やすべきもの」という固定概念が払拭されて、経営者として大切にすべきことに気付かされますね。

ーー「売り上げを減らす」というのはスタートアップにとっては逆説的に思えるメッセージで、インパクトのあるタイトルに感じました。

 鈴木さん:本書では一貫して「社員を犠牲にしてまで追う数字なんてない」というメッセージが伝えられています。

スタートアップにおいて仲間が増えてきたり、業務量が増えてきたりする中で、最初にぶち当たる壁が「無理をしてしまう」ことだと思うんです。

売り上げだけを追い求めて、社員が過労で苦しんでいる。自分もオーバーワークで大変。そんな状態で世の中に価値を継続的に提供できるかというと、やはり難しいと思います。

今、自分が代表を務める「モクジヤ」のチームも、新しいメンバーが加わろうとしているタイミングです。

そういった組織に変化が起こるタイミングで読み返すと「組織として、チームとしてどうあるべきか」という視点を磨けると思います。

起業本は繰り返し読むことで学びが深められる

ーー書籍の学びを事業や経営に活かすには、どうアプローチしたら良いでしょうか?
 鈴木さん:乱読・多読をするのももちろん良いですが、「これだ!」と思った本があれば10回、20回と読み返すことをおすすめします。

同じ本でも10回目くらいから解釈の仕方が変わってきたり、事業のステージが変わったタイミングで読み返せば「これはこういう意味だったのか」と腹落ち感が高まったりします。

その本からより多くのことを吸収できますし、自分が起業家として成長していることも実感できますよ。

ーー事業の状況や自分自身が変化しているからこそ、心に響く言葉も変わってくるのですね。

 鈴木さん:そうですね。何度も読み返してみると、気が付いた頃には日々の行動が徐々に変わると思います。

ーー最後にモクジヤが運営する「創業者図鑑『モクジヤ』」について詳しく教えてください。

 鈴木さん:「モクジヤ」は創業者インタビューを掲載しているメディアですが、「会社のことは一切書かない」というコンセプトで取材をしているのが特徴です。

創業者の生まれてから起業・創業に至るまでの生い立ちを深掘りする記事を多数掲載しているので、将来起業を考えている学生さんや、その親御さんなどにも見ていただきたいと思っています。

これから自分たち、そして子どもたちが将来的に様々なチャレンジをする中で「起業という道もあるんだ」「こんな人もいるんだ」と知ってもらい、選択肢を広げる一つのきっかけにしてもらえれば嬉しいですね。

「創業者オタク」をしていて楽しいのは、創業者の幼少期からの生い立ちを知れば知るほど自分との意外な共通点が見つかり、その人となりを身近に感じられる点。

どんな創業者も初めから立派な人物だったわけではなく、同じ人間です。

だからこそ、その背景を知り、彼らの思考や行動の起点を理解することが、誰かの挑戦を後押しする第一歩になると思います。