
スタートアップのプレスリリース活用法|最小限の予算と人手でメディア露出するノウハウ
ビジネス成長を目指す起業家にとって、PR活動は避けて通れません。一方で
- 莫大な資金を投じて、大々的に宣伝広告を打つのは難しい
- 情報発信のためにSNSをはじめてみたが、なかなか継続できない
など、予算と人手に限りがあるスタートアップでは、PRで壁にぶつかることも多いのではないでしょうか。
企業活動を端的にまとめてメディア向けに配信するプレスリリースは、予算や人手が少ないスタートアップでも比較的取り組みやすいPR手法です。
この記事では、スタートアップの企業向けに特化して、プレスリリースを通じたPR活動の全体像やプレスリリース制作のポイントを解説します。
プレスリリースとは
プレスリリースとは、企業がメディアの記者向けに配信する公式の文書のこと。
新製品や新しいイベントなど、今まで公開していなかった情報をステークホルダーに伝えるためのツールです。
またプレスリリースの配信は、企業のPR(Public relations)活動の一部と捉えることもできます。
PR(Public relations)とは
PRとは、組織とその組織を取り巻く社会(=Public)との間で信頼関係を創り出すための戦略的コミュニケーションのこと。
PRをうまく仕掛けられれば、周囲からの良い評判を得られ、仲間や投資集めにもつながります。
PR活動の例
PRと一口に言っても、やるべきことは多岐に渡ります。
- プレスリリースの作成
- イベントやアワード・ミートアップの主催
- 記者会見やメディアからの問合せや取材対応
- 炎上対策や危機管理
- 不祥事への対応 など
世の中には不祥事対応のコンサルティング会社も存在しており、お詫びのリリースや謝罪会見のトレーニングをサービスとして提供するところもあります。
PRの役割
PRの役割は組織の活動に対して共感してくれる人を増やし、社会と良好な関係を築くことにあります。
その中の手段の一つであり、資金に余裕のない起業初期にも始めやすい取り組みとして、プレスリリースの配信があると知っておくと良いでしょう。
広告とPRとの違い
PRと広告の最大の違いは、情報発信の主体が出稿企業にあるのか、第三者(メディア)にあるのかという点にあります。
広告の場合、企業がお金を払って広告枠を購入しているため、情報発信の主体は企業(広告主)です。そのため、企業(広告主)が発信する内容を自由にコントロールできます。
一方PRでは、企業はメディアに対して情報提供を行いますが、最終的にその情報を取り上げるかどうかの決定権はメディア(新聞・TV・webメディアなど)にあります。
PR活動を行う際は、メディアに興味を持ってもらえるよう「世の中の潮流や興味・関心を踏まえた上で、どんなメッセージを伝えるか」というPR視点が問われます。
PR施策の事例
スタートアップが実践したPRの事例として、株式会社LayerXが2023年9月に発表したインボイス制度に関する調査リリースがあります。
調査の内容は、2023年10月からのインボイス制度への対応に伴う企業の業務負担として「経理1人あたりでは約1〜2営業日分/月、日本全体では毎月約3,413億円の人件費が追加で発生する可能性がある」というもの。
リリースタイミングがインボイス制度開始を目前に控えた時期だったことと、調査結果の社会的注目度の大きさから、このリリースは多くのメディアに取り上げられ話題となりました。
- ニュース性の高い情報を通じて社会に疑問を投げかけた
- 会計管理ソフトを提供する同社の名前を知ってもらうきっかけを作った
という点で、この事例はスタートアップが行うPRの好例と言えるでしょう。
プレスリリース配信の流れ・活用方法
プレスリリース配信を通じたPRを成功させるには、メディアやユーザーへ向けて計画的にアプローチをする必要があります。
ここではプレスリリース配信の流れと、リリース後の活用方法について紹介します。
1:プレスリリースの企画・作成
発表したい情報の要点を明確にし、魅力的な見出しや内容を検討します。
プレスリリースでは、メディアや読者にとって興味深いテーマや切り口、ストーリーを記載することが重要です。
さらに、記者が記事を書きやすくするために、下記の情報を盛り込むとよいでしょう。
- 市場が抱える課題
- 数値ベースでのトレンド
- 記者が質問しそうなFAQ
プレスリリースの具体的な企画・作成の方法は、下記の記事で解説しています。
2:掲載したいメディアや記者、記者クラブへの持ち込み
メディアには日々大量のプレスリリースが届くため、ただプレスリリースを配信するだけではなかなかメディア掲載に至らないことがほとんど。
社会からの認知度が低いスタートアップのプレスリリースであればなおさら、記者の目に留まるのはまれです。
メディア掲載を目指すには、特定のメディアや記者・記者クラブへコンタクトを取り、プレスリリースの持ち込み(リーク)を行うことも有効です。
特に、ニッチな業界に特化した小規模メディアなどでは、持ち込みが受け入れやすい傾向にあります。
メディアの記者と関係性を作るために、メディアの問い合わせフォームや記者個人のSNSに積極的に連絡してみましょう。
3:プレスリリース配信(配信サービス、HP、SNSなど)
作成したプレスリリースを、下記の場所に配信します。
- プレスリリース配信サービス
- 自社ウェブサイトのニュースセクション
プレスリリース配信サービスには「最適なタイミングでの予約配信機能」「複数メディアへの一斉配信機能」など、PRを効率的に実施するための機能があります。ぜひ有効活用しましょう。
またプレスリリース配信後は、個人/企業のSNSアカウントで情報の拡散も合わせて行いましょう。
自分の事業を応援してくれる知人に拡散をお願いするのも効果的です。
4:効果測定
掲載からある程度時間が経った後に、プレスリリースの効果測定を行います。
メディアでの掲載回数やインプレッション、ソーシャルメディアでのシェア数、ウェブサイトへのトラフィックなどの指標を確認します。
またプレスリリース配信サービスの中には、これらの指標を収集してくれるサービスもあります。
これらの反応を確認しながら、次回の話題作りや事業の方向性の見直しに役立てると良いでしょう。
起業初期にプレスリリースに力を入れるべき理由
起業初期は、プロダクトの開発や営業、資金調達活動などの優先順位が高いため、「PR活動に時間を避けない」という人も多く見られます。
「経営者や社内で文章が上手い人が、片手間でプレスリリースを書く」というところも多いのではないでしょうか。
しかし、起業初期のタイミングからプレスリリースを作成し、世の中へ定期的に発信することにはメリットもあります。
プレスリリースの発表やメディア掲載がチームのモチベーションになる
起業初期は、事業の不確実性の高さや少ないリソースといった厳しい環境の中でも「ビジネスを成長させなければいけない」というプレッシャーにさらされています。
そんな中でプレスリリースを配信することは「自分たちの事業が前に進んでいる」という実感をもたらします。
またプレスリリースがきっかけでユーザーからのフィードバックを受けたり、メディアに取り上げられたりすることで、メンバーのモチベーション向上も期待できます。
将来の顧客や提携先を見つけるきっかけになる
プレスリリース配信サービスやSNSが発達した現代では、プレスリリースはメディアだけが見るものではありません。
将来的な顧客やパートナーなど潜在的なものを含めて、多くの人がプレスリリースを閲覧します。
プレスリリースで定期的に情報発信することで、早期から顧客を獲得したり、有力なパートナーを見つけたりすることに役立ちます。
スタートアップのプレスリリース配信機会8つ
1:会社設立
会社の設立は企業にとって大きなニュースです。
会社設立のリリースを配信することは、提携先や顧客獲得の機会が増えるきっかけにもなります。
会社設立のリリース配信の際は、企業のミッションや経営陣の紹介など、会社の特徴を伝えましょう。
2:サービスローンチ/機能アップデート
新しいサービスや製品のローンチ、既存サービスのアップデートなども、プレスリリースの絶好の機会です。
新機能や改善点、顧客にもたらす価値を伝えるとともに、顧客ニーズから見える社会的背景も紐解くことで、プレスリリースの価値がより高まるでしょう。
3:資金調達
資金調達ラウンド(シード・シリーズAなど)の成功は、投資家や市場への信頼性を高めるきっかけとなる情報です。積極的に発信しましょう。
また資金調達を発表することで、企業の成長計画や戦略をアピールし、新たなパートナーシップや業務展開の機会にもなります。
4:イベント出展・登壇・クラウドファンディング
業界イベントへの出展や登壇・クラウドファンディングキャンペーンを実施した際にも、プレスリリースでの告知は有効です。
企業が特定の業界に対して専門知識があること、ビジョンを掲げていることを示すことで、業界でのリーダーシップを強調するとともに、知名度向上が期待できます。
5:業務提携・資本提携
業務提携や資本提携も、注目を浴びる大きな機会となります。
特に、提携先の企業・団体の認知度が高かったり、業界内での地位が高かったりするほど、よりニュース性が高くなります。
また業務提携・資本提携のプレスリリースを配信する際はリリースの価値を高めるために、相手企業との連携の目的や提携後の展開、予想される利益を盛り込みましょう。
6:オフィス移転
オフィスの移転や新たな拠点の開設は、企業が順調に成長していることを示す象徴的な出来事と言えます。
また地方に新たな拠点を開設する場合は、「なぜその地域を選んだか」「今後地域にどう貢献するか」などを具体的な情報として盛り込むと、その地域でのメディアからの注目度が高まります。
7:国や自治体、機関等からの認定や受賞
国や自治体、業界機関からの認定や受賞を受けた場合も、プレスリリースで発表しましょう。
受賞の理由や評価基準についても詳細を記載することで、企業の専門性や卓越性、信頼性をアピールできます。
8:特許取得
特許の取得は、知的財産を保護するとともに、自社が持つ技術の革新性を示すきっかけにもなります。
プレスリリースでは特許の詳細や特許がもたらす競争上の優位性について言及すると、業界の独自性や影響力を高めることにも繋がります。
起業初期にプレスリリースを配信するときのポイント
目的を「購買」ではなく「認知」に置く
起業初期にプレスリリースを配信するとき、最初に考えるべきは目的設定です。
プレスリリースを通じて商品を直接購入してもらうことは難しいことも多いため、焦点を購買ではなく認知度向上に置きましょう。
また、KPIも売上ではなく、ページビュー(PV)やメディア掲載数など、ブランドの認知度を測る指標に注力しましょう。
継続的に発信する
スタートアップが知名度や話題性を高めるには、継続的なプレスリリースの発信が効果的です。
認知度の低い企業や製品の場合、1回のプレスリリースでは十分な効果が得られません。
例えば「月に1度プレスリリースを出す」とルールを設け、情報を継続的に提供することで、記者に名前を覚えてもらえる可能性が高まります。
配信タイミングを工夫する
話題性の高いニュースでも、配信時期が悪ければメディアに取り上げられないことがあります。
例えば、月曜日や金曜日は記者が忙しいため、配信が埋もれがちです。
また「お正月」「クリスマス」などの季節や時期が重要なプレスリリースは、直前〜当日に出してもあまり効果がありません。
メディアに掲載してもらう時期から逆算して、少し前には情報を提供する必要があります。
このようにメディアの動向を考え、最適なタイミングで情報を提供しましょう。
掲載してほしいメディアを研究する
プレスリリースを配信する前に、掲載してほしいメディアを研究してみるのもおすすめです。
どんな情報が掲載されているか、どういったキーワードが使われているかを分析し、プレスリリースに盛り込むようにしましょう。
また知名度の低い会社が、はじめから大手メディアの掲載を狙うのは現実的ではありません。
最初は小規模な地方紙や専門誌をターゲットにし、知名度を徐々に高める戦略が有効です。
第三者に読んでもらう
プレスリリースを書いたら、第三者に読んでもらうことをおすすめします。
特に自分でプレスリリースを書いた場合、つい商品に込めた想いや商品の特色を盛り込みたくなります。
第三者の目でリリースのニュース性や独自性など、PR視点を客観的に評価することが重要です。
スタートアップにおすすめのプレスリリース配信サービス
PRTIMES
PRTIMESは、月間PV7500万と多くのユーザー・メディアが閲覧するプレスリリース配信サービスです。
原文をそのまま転載する提携メディアが230媒体あり、比較的記事化のハードルが低いのも特徴です。
会社設立から2年未満の企業がプレスリリースを月1回無料で配信できる「スタートアップチャレンジ」というプログラムがあり、資金の乏しいスタートアップにとっても使いやすいものになっています。
@Press
@Pressの特徴は、スタッフによるプレスリリースの校正・文体改善といったサポートが充実している点です。
初めてプレスリリースを書く企業にも、きめ細やかな支援が行われています。
またプレスリリースの質の高さが担保されているためか、1配信あたりの平均記事掲載数が高いと言われています。