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「新しいことを始めたい」人こそ地方へ! 国家戦略特区・養父でインバウンド拡大に取り組むスタートアップの挑戦

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日本の地域課題の解決を目指す新たなフィールドとして、スタートアップや起業家から注目される兵庫県養父市。自治体との距離感が近く、実験的なプロジェクトにも積極的に取り組む姿勢も魅力の一つです。

今回はスタートアップ・起業家のための地域ツアー「hidane Camp(ヒダネ キャンプ)」に参加し、養父市から新たなプロジェクトに挑戦する角川 翔大さん・奥島 輝也さんのお二人の挑戦ストーリーを伺いました。

プロフィール

角川 翔大

テレビ局でカメラマンとしてニュース現場を10年間経験し、その後大阪の映像制作会社合同会社Wizflickに参画。CMからWebCMまで様々な動画制作を手掛け、自然な姿を捉え、感動を生み出す作品作りに情熱を注ぐ。今後は映像制作に限らず、社会に貢献できる事業者としての成長を目指している。

プロフィール

奥島 輝也

京都府京都市出身、神戸在住。Highline College、京都産業大学大学院卒業後、建設業界を中心にセールスキャリアを積み、アメリカ系大手設備会社のシステムセールス、新規事業業務を担当。2023年に株式会社hupodeaを創業。日本企業の90%以上がローカル企業であり、グローバル化への対応が遅れている現状に着目。同時に、日本に溶け込めず帰国を余儀なくされる外国人の問題にも危機感を持ち、外国人と企業のスポットワークマッチングサービス「hupoSHARE」を開発。現在、本サービスを全国の外国人留学生を対象に展開し、多様な業種の企業とのマッチングに取り組んでいる。

hidane Camp(ヒダネ キャンプ)とは?


「hidane Camp」とは、norosiに所属する起業家・スタートアップたちがnorosi加盟自治体へリアルに集う、合宿形式のイベントです。

地域の課題をその目で確かめ、その解決策を磨き上げ、自治体の担当者の方にプレゼンテーションします。

地域課題と事業内容がマッチすれば、スタートアップ×自治体・地域の事業者との実証実験やコラボ事業も生まれるかもしれません。

兵庫県内陸部にある国家戦略特区・養父(やぶ)市とは?


兵庫県養父市は人口約2万人、県の北部に位置し、西は県内最高峰である氷ノ山、北は兵庫県・大阪府・京都府にまたがる妙見山に囲まれた、美しい自然が魅力の地域。

日本各地のブランド牛のルーツとも呼ばれる黒毛和牛「但馬牛」や、さわやかな香りが特徴の「朝倉山椒」などの特産品が知られており、豊かな自然を活かした農業やアウトドアスポーツが盛んです。

近年は「世界で一番ビジネスがしやすい環境」を創出することを目的に創設された国家戦略特区に指定され、従来の法制度や規制にとらわれない新たなビジネスにも取り組みやすい地域となっています。

norosiの活動の中で感化され、「何かやりたい」と思うように


ーーお二人がhidane Campに参加したきっかけは何ですか?

奥島さん:そもそも角川さんとは、数年前、ある会社さんのプロジェクトがきっかけで知り合いました。

プロジェクト終了後も個人的にやりとりをしており、私がnorosi(※1)のコーディネーターになったタイミングで角川さんに「動画制作領域のプロサポーター(※2)にならないか?」とお声がけしたんです。

角川さん:プロサポーター就任をきっかけに、norosiの運営メンバーの方たちとも関係が深まり、その流れの中で養父市への訪問についていくこともありました。

前回養父を訪れたとき、養父の地域課題やユニークな点、そして他のスタートアップの方たちの活動を聞きながら「自分も何かやってみたいな」と感化されて。

そのときに奥島さんと「養父市で一緒に何かやろうよ」と話していたんです。

そして今回hidane Campが養父で開催されることを知り、「ここに合わせて養父市の方に企画を提案してみよう」ということで参加しました。

(※1) norosiとは
アイデア段階から挑戦できる官民連携のスタートアップスタジオ。全国から9自治体・21企業がnorosi会員として加盟しており、所属するスタートアップ・起業家は各種サポートプログラムのもとで事業開発に取り組める。

(※2)プロサポーターとは
norosiと提携するスタートアップ顧問。事業開発・法務・財務・ITなど様々な業界のスペシャリストが集まっており、norosiに所属するスタートアップに対して事業立ち上げ・スタートアップ経営のアドバイスやサポートを行う。

ーーお二人が企画されたプロジェクトの内容を教えてください。

角川さん:養父市内へのインバウンド観光客を増やすために、外国人留学生がインフルエンサーとなって養父の魅力をSNSで発信してもらう「Yabu Global Connect」というツアー企画を考えました。

奥島さんが自社サービスとして外国人留学生と企業のスポットマッチングサービス「hupoSHARE」を開発しており、私が企業向けに映像制作事業をしているので、この2人の得意領域を掛け合わせて養父に外国人を呼び込もう、というプロジェクトです。

奥島さん:今回のhidane Campでは養父市の職員さんへ外国人留学生向けのツアー企画をプレゼン。ツアーにあたっての移動手段や宿泊施設、コラボしてくれる事業者さんの紹介など、協力を募りました。

ーー今回の訪問の成果はいかがでしたか?

奥島さん:養父市のインバウンド促進の担当者さんに話を聞くと、実は市が推進する形でインバウンドモニターツアーをすでに実施しているとのことでした。

似たような取り組みをしているのであれば、もっと違う切り口や企画をやった方が良いかもしれないなと考えているところです。

一方、自治体の方から外国人観光客受け入れのリアルな状況を直接伺ったり、海外展開を考えている地元の事業者さんを紹介いただいたりと、次のアイデアの種になりそうなものもたくさん得られました。

ーースタートアップ・起業家の視点から「養父でビジネスをする魅力」を教えてください。

角川さん:色々な意味で自治体さんとの距離感が近いなと感じますね。スタートアップ連携の窓口を担当されている片岡さんはビジネスの現場感をよく知っている方ですし、市長や他の部署とのコミュニケーションも活発だなと思います。

例えば、規模が大きく部局との調整が大変な自治体だと「別の部局との調整が必要だから、相談後にまたご連絡します」とスピード感が落ちてしまうこともあると思うんです。

「地方課題解決のために、何か実験的なプロジェクトを立ち上げてみたい」と思っている人たちにとって、こうした自治体の方のフットワークの軽さはすごくやりやすいかなと。

奥島さん:いい意味で硬すぎず、事業提案も快く受け入れてくださる点も魅力的なポイントだと思います。

今回のプロジェクトも企画の詳細部分は詰められていなかったのですが、アイデア段階でも話を聞いてくれて「こうするといいんじゃない?」とフィードバックをくれました。

また片岡さん自身が「スタートアップと地元の事業者さんがつながってくれることが、自分たちにとっても一つの成果」と話してくれていて。小さなプロセスも成果として見てくれるので、チャレンジするハードルが下がってありがたいですね。

角川さん:確かに、結果的に今回提案したプロジェクトは方向性を見直すことになりそうですが、「企画を何回でも、何個でも出していいよ」という空気感があっていいなと思いました(笑)。

普通の自治体だと「一回ダメだったら当分挑戦できない」という雰囲気が結構あるのかなと思うけれど、養父は「何か挑戦したい人はウェルカム!」という感じが伝わってきます。

ーー最後に、今後の意気込みをお願いします!

奥島さん:自分が今本業でやっている外国人留学生向けのスポットマッチングサービス「hupoSHARE」についても、養父市で一緒に実証的な取り組みができそうだなと思います。

外国人留学生は労働の許可を得ていても週28時間以上働けないという規制があるのですが、国家戦略特区である養父市であればその規制を緩和するための実証ができるのではないかと。

今回のhidane Campで広瀬市長とこの規制緩和についてお話をしたところ、興味を持ってくださっていました。

まだ詳細は検討中ですが、今後も養父で色々なことにチャレンジしてみたいですね。

角川さん:今やっている映像制作事業は競合も多いので、自社サービスとなる事業やプロジェクトを育みたいという気持ちが徐々に湧いてきているところです。

その取り組みの第一歩として今回奥島さんとの共同プロジェクトを企画しましたが、今後新しいことにチャレンジしていくときもまた養父で何かできたら嬉しいです。

(※3) 国家戦略特区とは
「世界で一番ビジネスがしやすい環境」を創出することを目的に設立した規制改革制度。2024年現在、養父市をはじめとして10区域が国家戦略特区として指定されている。
国家戦略特区に指定された地域では、観光・教育・農業など「岩盤規制」と呼ばれる長年改革が進まなかった分野の規制緩和や特例措置の整備、関連する諸制度の改革を総合的かつ集中的に実施できる。

二人が参加したhidane Campの様子はこちら