
課題だらけの地方から新たな価値を生む。福祉現場の課題から生まれた“人を育てる”AI
アドリブワークスでは、アイデア段階から挑戦できるスタートアップスタジオ「norosi」を運営しています。今回は、アドリブワークスが愛媛県より事業を受託し実施された、愛媛県内発のスタートアップの創出を目指すプログラム「NEXTスタートアップえひめ」でファイナリストに選ばれた起業家のストーリーを紹介します!
プロフィール
阿部 太一
1990年広島県生まれ。政治家を志し、同志社大在学中より議員秘書として、地域政党の立ち上げに関わる。2015年より「やったことがすぐカタチになる民間で勝負したい」と、家業のきくぞのケアパーク(株)へ入社。介護事業以外の新基軸を作るべく、「なないろの羽」「Aile(エール)学舎」といった放課後等デイサービスを県内最多15拠点開設。店舗開発、職員採用、広報、障害児童への集団授業の技術研修を日々行っている。
阿部さんのこれまでのキャリアについて教えてください。
阿部さん:中学生の頃から漠然と「政治家になりたい」と思っていました。テレビや新聞の政治家に対する否定的な報道を見て、「言うだけの人にはなりたくない。それなら自分がやってやろう」という正義感のようなものが芽生えたのが原点だったと思います。
大学では京都の同志社大学に進学。政策学や組織論を学びながら、地域政党の立ち上げにも関わらせていただきました。大学4年生からはその政党の代表の議員秘書として働き始め、卒業後も議員秘書の仕事を続けました。
秘書として、議員の方の政治活動を間近でサポートする中で、政治の世界のスピード感にどこかもどかしさを感じるようになりました。たとえば、もし仮に自分が選挙に当選して政治家になれたとしても、そこから政策を動かす影響力をつけるには10年単位の地道な地盤づくりが必要です。
阿部さん:一方で、父が愛媛で介護事業を営んでおり、後継者として入社しないかという話も以前からしてもらっていました。
政治というフィールドではなく、民間企業という既に基盤が整っているフィールドで動く方が、社会にインパクトを与えられる。
そう考えるようになり、25歳のときに愛媛へ行く決断をしました。
入社後は、介護事業に続く第二の事業の柱を作ろうと、新規事業である放課後等デイサービス事業の立ち上げを担当。現場のニーズと向き合いながらサービス設計を行い、現在は四国最大規模となる愛媛県内15拠点で「なないろの羽」「Aile(エール)学舎」という施設を運営しています。
阿部さんが「NEXTスタートアップえひめ」に参加されたきっかけを教えてください。
阿部さん:「NEXTスタートアップえひめ」を知ったのはWeb広告がきっかけです。
NEXTスタートアップえひめとは
株式会社アドリブワークスと愛媛県の協働プロジェクトとして、愛媛県の創業・スタートアップ支援策「愛媛グローカル・フロンティア・プログラム」(EGFプログラム)の一環として行われるスタートアップ育成プログラム。
norosiが提供する起業家支援サービスをカスタマイズし、短期間で事業アイデアのブラッシュアップから事業計画作成・ピッチの特訓・協業パートナーの獲得までを一貫支援する。
阿部さん:当時は事業承継が目前に迫ってきたタイミングで、「このまま事業を引き継いで本当によいのだろうか」という気持ちを抱えていました。
自分自身、議員秘書時代も、愛媛に来てからも、ずっと組織のNo.2というポジションで仕事をしてきました。しかし事業承継後は、自分が組織の最終的な責任者として意思決定をしなければいけません。
大きくマインドや視点を変える必要がある中で、「今の延長線上の仕事だけしていて本当に大丈夫なのか?」という漠然とした不安があったんです。
まったく0からのサービス立ち上げに挑戦できるこのプログラムは、経営者の素養を身につける上できっと良い経験になると思い、勢いで応募を決めました。
プログラムを受講して、特に印象に残ったことはありますか?
阿部さん:自分はもともと「1→10」は得意でも、「0→1」の立ち上げが苦手だと感じていましたが、このプログラムでは「0→1」の基礎を丁寧に教えてもらいました。
「trivenAi」を使うことで、「課題」や「アイデア」にとどまっていたものを、投資可能なビジネスの形に落とし込むプロセスを学べたのがよかったです。
人に聞いたり自分で調べたりして、本来は1週間近くかかるであろう事業企画書作りが、「trivenAi」を使えばわずか数時間で、しかも場所や時間の制約もなく何度も試行錯誤できる。ビジネスや普段の業務にAIを活用するメリットを改めて実感しましたね。

trivenAiによるビジネスアイデア磨き上げのイメージ
阿部さん:また、コーディネーターの方からフィードバックが得られる環境も非常にありがたかったです。
もともと人前で話すことには慣れていて、プレゼンにもそれなりに自信がありました。でも、ピッチのように短い時間で要点を伝えるのはほぼ未経験。
今回、コーディネーターの方にピッチを見てもらったとき、自分では気づけていなかった話し方のクセを指摘してもらい、「話し方を少し変えるだけで、こんなにも伝わり方が変わるんだ」と実感できたのは、大きな学びでした。
会社では立場上、客観的なコメントをもらうことがなかなか難しい場合もあるからこそ、このような第三者から意見をいただける場は貴重だなと思います。
阿部さんが手がける新サービス「TESCo(テスコ)」について教えてください。
阿部さん:「TESCo」は、困り感や、発達障害のある子どもとの関わり方を実践的に学べる、療育・保育・教育従事者向けのAIトレーニングツールです。
着想のきっかけは、自社で行っている放課後等デイサービス事業の職員研修でした。子どもとのコミュニケーションをより良いものにするには、座学だけではなく、模擬授業によるトレーニングが何より大切です。
しかし、気恥ずかしさや準備の大変さなどが理由で、なかなかトレーニングが継続して実施されない、クオリティが一定にならないという課題がありました。
そうすると、職員の実践力を磨くには現場で経験を積むしかないのですが、「職員の成長のために子供を練習台にしていいのか」という葛藤がずっと頭にあったんです。
阿部さん:「TESCo」は、AIが多様な認知特性をもつ子どもを生成し、現実に近い対話シナリオで繰り返し練習が可能なサービス。活用する中で、実際の保育や教育の現場で求められる「肯定的な対応」を「理論的なフィードバック」を受けて習得できます。
現在はプロダクトを開発中で、完成次第、放課後等デイサービスや保育・教員養成課程の学生さんを対象に展開する予定です。
地方で起業を目指す方々に向けて、メッセージをお願いします。
阿部さん:地方起業の強みは「課題が可視化されやすいこと」だと思います。都市部に比べて、地方には不便や足りないものが多く、そこにこそビジネスの種が眠っているからです。
たとえば首都圏であれば、子どもたちとの接し方を研修できるプロ人材がたくさんいるかもしれません。でも、地方にはなかなかいない。だからこそ「TESCo」のようなアイデアを思いつくことができたのだと思います。
地方での挑戦は、都市部よりもリソースが限られている分、やりがいも大きいので、まずは課題にあふれた環境を俯瞰してみることから始めてみてください。
アドリブワークスでは起業の志を持つ個人の方に対して、再現性高く事業開発を進められるプログラムを提供しています。プログラムの利用を検討する方は、下記からご連絡ください。
▶︎個人で起業に挑戦したい方はこちら:スタートアップスタジオnorosi