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SUインタビュー

【モクジヤ・鈴木粋】新たな支援のエコシステムで、学びや体験がお金に左右されない世界を創る!

アドリブワークスでは、シード期”未満”に特化したスタートアップスタジオ「NOROSI」を運営しています。今回は、NOROSIに所属するスタートアップの起業ストーリーをご紹介します!

プロフィール

鈴木 粋

2000年、京都で生まれる。創業者オタク。2023年8月株式会社モクジヤ設立。モクジヤでは、奨学金制度・業界の改革に取り組んでいる。これまでは、奨学金の図鑑サービス「シュッドリスト」を開発し運営。現在は、自社製品の実購買検証をしたい事業者と学習資金や機会を求める若者をマッチングする検証プラットフォームを開発検証中。趣味で創業者図鑑を作成中。
▶︎コーポレートサイト:株式会社モクジヤ

自社製品を購買検証したい事業者と学びや体験のための資金や機会を求める若者を繋ぐ

ーー鈴木さんが現在開発中のプロダクトについて教えてください。

鈴木さん:支援を生み出す購買検証プラットフォーム「モクジヤ」を開発しています。

日本では学生を支援するために、様々な奨学金制度が用意されています。近年は、返済のない給付型の奨学金制度も増え、質も向上しています。

しかしそれらの奨学金には複雑な募集要項や給付条件、書類提出などがあり、応募・取得ハードルの高さやリスクは拭えず、学習機会や体験を逃してしまうという課題がありました。

当初はそんな既存の奨学金制度を改革しようとしていましたが、どうしてもこれまでのように社会性のみが表立つ協賛型のモデルでは、支援制度数・支援額面の頭打ちがあると痛感しました。

そこで考案したのが、支援を生み出す購買検証プラットフォーム「モクジヤ」です。

モクジヤの最大の特徴は、事業者側の課題解決が社会的な新しい支援の形を生み出していく「顧客課題×社会課題」という仕組みです。

特にスタートアップや中小事業者が抱える「自社製品・サービスに顧客がお金を払ってくれるのか正確に検証したいが、検証コストと不確実性が高い」という課題に対して「より手軽により確実な購買検証」という価値を提供しています。

具体的には、事業者がモクジヤに支払った利用料の内、一部が『使い道限定型の支援金』としてモクジヤ内に流通します。それを掴み取った若者は、利用料を支払った事業者(複数)の製品・サービスの中であれば、自由にその支援金を使えるという仕組みとなっています。

モクジヤというプラットフォーム内で競争市場が生まれ、実際にプロモーションや製品の質などでユーザーの購買行動に変化が起きます。よりリアルな市場で、自社製品が顧客にどのような反応を与えるのかを検証することが可能です。

ーー「購買検証プラットフォーム」という、今までにない形のビジネスなのですね。どうやって今のビジネスにたどり着いたのでしょうか?

鈴木さん:実は、はじめからこのビジネスアイデアを思い描いていたわけではありません。事業領域のピボットや、複数回の仮説検証と事業転換を経て、少しずつ今の事業を作ってきました。

一番最初のビジネスアイデアは、「大学の授業で使う教科書を時間貸しする」というもの。大学に通う中で、教科書の価格が高いという課題を感じたことがきっかけで考えたサービスです。

サービスを立ち上げるために学生へお金に関する困りごとをヒアリングをすると、教科書の課題以上に、学費・留学費・資格勉強のための費用などを賄えないという課題を抱える人が多いことを知りました。そして、本来そういった学ぶ意欲のある学生をサポートするための奨学金が、様々な理由で学生にまで届いていないことも分かってきました。

そこで「教科書」から「奨学金」へと事業領域を転換し、奨学金の情報を図やグラフを使ってわかりやすく整理した奨学金の図鑑サービス「シュッドリスト」をリリースしました。

ーー 返済や審査の有無など、応募に必要な情報がビジュアル化されていてとても見やすいです。学生からの反響はどうでしたか?

鈴木さん:「分かりやすかった」「これを見て奨学金に応募できた」という感謝の声をいただいたとともに、「応募したけれど落ちてしまった」という声もたくさん寄せられました。実際に奨学金を手にしてもらうことがゴールなのに、可能性を示すだけに留まっていることにもどかしさを感じましたね。

そこで「奨学金制度そのものにメスを入れて、学びや体験のための資金や機会を掴み取るハードルを下げたい」と思ったことが、現在のモクジヤというサービスのアイデアにつながっています。

社会課題を扱うサービスからこそ、「お金を出したいかどうか」が大切


ーーモクジヤの現在の事業フェーズについて教えてください。

鈴木さん:これまでの社会性・SDGsといった理念に対する協賛型の給付奨学金制度では、支援の規模感に限界があると実感し、3ヵ月前から、持続的な支援の形が生まれるエコシステムを作るべく仮説検証を行っているところです。

スタートアップの端くれである自分たちの実体験や、その他周囲の事業者たちを見ていると、「購買検証」は避けて通れない関門であり、そこには検証コストや不確実性の高さといった課題が存在します。「より手軽でより確実な購買検証」が事業者側(顧客)への提供価値になるという仮説の元、サービスの検証を進めています。

ーー事業領域をピボットしたお話や、事業立ち上げから仮説検証までの早さを含めて、顧客の声をスピーディーに取り入れてビジネスを変化させている様子が伝わってきます。検証はどのように進めているのでしょうか?

鈴木さん:チームにエンジニアがいるので、プロトタイプは社内で開発できます。

その上でNOROSIのコーディネーターの方など、様々なメンターにビジネスアイデアを話し、フィードバックをもらいながら検証を進めています。

ビジネスを立ち上げる上で「『誰の、どんな課題を、どのように解決するか』をシンプルに言語化できるか」は一つの指標になります。話せないのであれば、そのビジネスアイデアはまだ甘いところがあるはず。

ある意味「言葉にするプロセス」それ自体が一つの検証になっています。

特にモクジヤは社会課題の解決を目指してスタートしたサービスなこともあり、マネタイズの視点が疎かになりがちです。持続可能なビジネスにするためにも「お金払ってでも使いたい」と思ってもらうための顧客価値の検証にかなり力を入れていますね。

アイデアが検証倒れしたとき、創業者の言葉が力をくれた


ーービジネスを進める中で、特に印象に残っているエピソードを教えてください。

鈴木さん:2022年に参加した京都府のアクセラレーションプログラムは、ビジネスの面でもマインドの面でも大きな転換点になっています。

当初は「大学の授業で使う教科書をレンタルする」というビジネスアイデアでプログラムにエントリーしており、私自身も「これはきっとビジネスにできるはず!」と根拠のない自信を持って参加しました。

しかしいざ検証してみると、ビジネスとして芽が出なさそうだと分かってきて……。

3ヶ月の参加期間の途中で、用意していたビジネスアイデアが検証倒れでなくなってしまったんです。

他の参加者はどんどん検証してブラッシュアップを進めているのに、自分だけ中間発表で何も話すことがなくなり、強い焦りや不安を感じていました。

学生へのヒアリングの中で「奨学金」というキーワードは掴み始めていたものの、当時は奨学金の専門知識もなく、素人が足を踏み入れていい領域なのかさえ判断できない状況。右も左も分からない中、事業を大きく転換するかどうか悩み続け、1週間で5キロ痩せてしまうほどでした。

ーー最終的には「教科書」から「奨学金」へ、大きく方針転換をする決断をしたんですね。勇気ある決断だったと思いますが、背中を押してくれたものは何だったのでしょうか?

鈴木さん当時を振り返ると、大きな会社やビジネスを立ち上げてきた、著名な創業者たちの言葉が支えになっていました。

もともと自分は「創業者オタク」を名乗っていて、「創業者図鑑」というInstagramアカウントを作るくらい、創業者の生い立ちやストーリーを追いかけるのが好きなんです。0から何かを始めて偉大なことを成し遂げてきた人たちの伝記や著作を読んで、そのエネルギーにワクワクしたり影響を受けたりしてきました。

例えば、私の憧れの創業者の1人であるSmartHR・創業者の宮田さんは、壮絶なピボットを10回以上繰り返して今のビジネスにたどり着いたと言われています。

様々な創業者が「最終的には顧客に使ってもらわないと意味がない」と語ってくれたからこそ、一つのビジネスアイデアに固執せず、柔軟にチャレンジしようと思えました。

アクセラレーションの経験によって「高速でPDCAを回し、柔軟に変化しよう」という考え方がチーム全体に浸透しました。「学びや体験がお金に左右されない世界をつくる」という目指すミッションは変えず、ビジネスモデルは顧客課題に合わせて変えていくマインドは、チームの大きな強みになっています。

意欲ある人たちに、学習機会とお金がきちんと巡る世界へ

ーーモクジヤの今後の展望を聞かせてください!

鈴木さん今開発しているモクジヤの検証を完了させて、新しい支援の形を生み出すプラットフォームとして世の中にどんどん広めたいですね。

社会性やSDGsのような理念への協賛型モデルでは支援の規模に頭打ちが来ると実感した今、しっかりと顧客への提供価値を見極め、持続可能な支援のエコシステムを創っていきます。

また長期的には、「学びや体験がお金に左右されない世界をつくる」というミッションを実現するためのサービスや仕組みを開発したいです。今は「学びたい」「何かを極めたい」と思っていても、金銭的理由で諦めなければならないシーンがまだまだ多いと思います。

そういった意欲のある人たちに、学習機会とお金をつかみ取るチャンスがきちんと巡るような経済圏を作っていきたいです。

ーー最後に、これから起業を目指す方へメッセージをお願いします。

鈴木さん:もしも「ビジネスを始めたい」と考えているのであれば、創業者のエピソードや言葉から学ぶのがおすすめです。

創業者のマインドと比較して自分の視野や見識の狭さに絶望することもありますが(笑)、この乖離の大きさもまた自分を強くするきっかけになると思っています。

「世の中に広く知られるサービスを作った」という結果だけに注目するのではなく、それを作ったプロセスを辿ると、幼少期に意外なルーツがあったり、泥臭いことをしていたりします。そしてその物語を追体験することで、自分自身も勇気づけられます。

「起業のアイデアはあるけど、なかなか動けない」という人は、創業者の著作を紐解いたり、「創業者図鑑」を眺めたりすると、何か発見があるかもしれません!

内容は取材当時のものです。現在のサービス名・事業内容・活動状況は同社のホームページ・SNSなどをご参照ください。

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