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SUインタビュー

【 sf.・佐野 涼香】子どもの幸福度向上を目指す子育てサービスを立ち上げたい!

アドリブワークスでは、シード期”未満”に特化したスタートアップスタジオ「norosi」を運営しています。今回は、norosiと愛媛県が協働で行った「愛媛県内発」のスタートアップの創出を目指したプログラム「NEXTスタートアップえひめ」でファイナリストに選ばれた起業家のストーリーを紹介します!

プロフィール

佐野 涼香

 
株式会社sf.(エスエフドット)代表。愛媛大学看護科卒業。大学病院小児科勤務の後、母の死を機に放課後等デイサービス「ツムグ志津川ひろば」を立ち上げる。療育の現場に携わる中、ユニセフ調査による日本のこどもの精神的幸福度の低さや自殺率の高さ、それでもなお変わらないこどもたちを取り巻く環境に疑問を持つ。
▶︎コーポレートサイト:ツムグ志津川ひろば

「自分だからできること」を目指して


ーーどんな学生時代を過ごしましたか?

佐野さん:愛媛大学の看護科に進学後、看護師になるために勉強や実習に励んできました。

疾患や治療法、看護援助の行い方などを一通り学びましたが、どちらかといえば知識や看護技術より、「患者さんご自身の人生を、どうしたらより良いものにできるか」ということに強く関心を持っていました。

病気になるのはもちろん怖く、多くの人が不安を抱えるものです。さらに疾患によってはすぐに治るとも限らず、治療法が未確立のものもあります。

そんな中で「病気と折り合いをつけながら、これからの人生をどう生きていくのか」を患者さんと共に考えたいと思っていました。

そうした想いのもとで患者さんと関わった経験は、「自分はどう生きていくのか」「生きるとはどういうことか」を深く考えるきっかけにもなりました。

ーー卒業後は看護師になられたのですね。

佐野さん:県内の大学病院に就職したのですが、社会人になって3ヶ月目に母を自死で亡くしました。

当時は精神的に不安定になり、休職させてもらいながらこれからのことを考えました。

大学病院に残って働くか、辞めて他のクリニックで働くか、自分で起業するか……。

いくつか選択肢はありましたが、「この経験をした私だからこそできることを探したい」と思い、最終的には起業することにしたんです。

ーー「自分だからこそできること」を目指して起業されたとのことですが、踏み出すことへの不安はありませんでしたか?

佐野さん:もちろん生活面での不安はありました。しかし「命を投げ出そう」という考えにまで行き着いたこともあり、一番は「命拾いしたんだからやってみよう」という感覚が大きかったです。

また、塞ぎ込んでいた時に本当に色々な人に助けられた経験を経て「もし失敗したり、辛いことがあったりしても、絶対に誰かが助けてくれる」と確信できるようになりました。

私が周りの人から助けられたように、困っている人に「誰かが助けてくれるから大丈夫」と自信を持って言える空間を作りたいと思ったんです。

子どもたちの生きる力を育む「アート融合型療育プログラム」


ーーsf.(エスエフドット)の社名の由来も教えていただけますか?

佐野さん:sf.は”sustainable future”の頭文字で、「持続可能な未来」という意味です。「誰もが無理をすることなく、自分らしく、ほどよく生きていける社会を作りたい」という想いが込められています。

日本はこんなに豊かな国にもかかわらず、世界の中でも自殺率が高い国で、子どもの精神的幸福度は先進国の中で最下位レベルと言われています。

sf.はこういった状況を変え、誰もが幸せに暮らせる世界を目指している会社です。

また”sustainable”という単語には「持ちこたえられる」「耐えることができる」という意味もあります。

私自身、母が亡くなってから何度も後を追うことを考えましたが、友人・知人がその度に助けてくれました。支えてくれる人たちがいたから、その時をなんとか耐えることができましたし、今は「生きていてよかった」と心から思えます。

困っていたり、辛い思いを抱えたりしている人たちに寄り添い、彼らが持ちこたえた先の未来を一緒に見たい。

そんな意味を込めた社名になっています。

ーー佐野さんの人生を懸けた想いがこもった社名ですね。現在はどんな事業を行っているのでしょうか?

佐野さん:23年7月から愛媛県東温市の「ツムグ志津川ひろば」にて、障がいを持っていたり、発達に特性があったりする就学児童(小・中・高校生)の放課後等デイサービスの福祉事業をしています。

ツムグ志津川ひろばの特徴は「アート融合型療育プログラム」を県内で初めて取り入れた点。

模範や正解がないアートという世界で、子どもたちの表現力や読解力を磨き、社会で生きていくための自己肯定感や感性を養うプログラムを提供しています。

24年4月からは支援対象の年齢の幅を広げ、児童発達支援事業(障がいやその可能性のある未就学児を対象とした福祉サービス)も開始予定です。



ーー設立から1年未満にもかかわらず、どんどん事業の幅を広げているのですね。現在はどのくらいの人数の方たちが働いているのでしょうか?

佐野さん:この春に入るメンバーを合わせると、専門職員含めて9名ほどになります。みんな「子どもたちの幸せのため」という想いに共感して入社してくれたメンバーです。

ただこの規模になると「個々人で頑張る」というフェーズではなく、「チームで動くための仕組み作り」が必要になると実感しています。

働いてくれるみんなの働きやすさも大切にしながら、子どもたちの可能性を最大化するために、組織風土やチーミングをどうしていくか。今まさに壁にぶつかっているところです。

子どもの幸福度向上を目指す子育てサービス「joypoi」


ーー「NEXTスタートアップえひめ」で古坂大魔王賞を受賞されたビジネスアイデア「joypoi(ジョイポイ)」についても教えてください。

佐野さん:「joypoi」は小学生とその親御さんへ向けて、学童・学習塾・病児保育・育児相談という4つの機能を提供するサービスです。

こどもたちが主体的に社会を学ぶことができ、また学びの中で生まれたアイデアを社会実装できる場を目指しています。

現在は「地元企業で働く大人への取材」「取材先企業の魅力発信」「子どもと企業のコラボレーション」などのプログラムを企画中です。

現代の共働き世代である親御さんと子どもとの間には、コミュニケーション不足や学習環境が確保できていないなどの問題が発生しています。

「joypoi」でこれらの問題を解消し、こどもたちの主体性と幸福感の向上を実現したいです。

ーー「joypoi」の現在の事業状況はいかがでしょうか?

佐野さん:今年の5月にオランダの小学校や学童を視察して、今冬には「joypoi」オープンできればと考えています。

オランダは子どもの精神的幸福度が1位の国で、子どもたち自身が自分で自由に時間割を組めるんです。

そういったのびのびした教育環境をどう整備しているのか、そのすごさを間近で見たいと思っています。

今は現地の日本語を話せる通訳の方とオンラインでやりとりをしながら、旅程プランの調整や視察に行く小学校の選定を行っています。

自分のやりたいことを後押ししてくれる人は必ずいる

ーー「誰もが幸せになれる」社会を実現するために、パワフルに活動されていらっしゃるのが印象的です。佐野さんが今後やりたいことについても教えてください。

佐野さん:やりたいことはたくさんあって、「50年ビジョン」という形でノートに書き溜めているんですよ。

まずは子どもたちが障害の有無に関わらず、一緒に交流できる場を作りたいです。発達の凹凸がある子どもたちへの支援体制は整いつつあるので、次の段階として集団で関わり合える場があると良いなと。

また、一緒に働いているメンバーのキャリアや自己実現も応援できる会社でありたいです

「いつかコーヒー関連で起業したい」というメンバーと一緒に子どもも遊べるカフェを作ったり、就農を目指している人の山畑の一部を借りて子どもたちが農業体験できる場所も作ったり……。

子どもも大人も混じり合い、有機的なつながりが生まれる場所を、並行しながら作りたいですね。

そして働く女性たちが、仕事と育児の両立で悩まないようなサービスも作りたい。育児に関するレクチャー事業、病院に行くのが大変なお子様向けの訪問看護など、色々構想はあります。

女性が自分らしく働き、自分の子供たちも楽しく過ごせているというのを当たり前にしたいです。

ーー子どもたちだけではなく、一緒に働くメンバーも生き生きと働いているのが伝わってきます。そして領域の幅が広い(笑)。やりたいことがたくさんあるのですね。

佐野さん:本当にたくさんあるんです(笑)。

そして最終目標は、保育所と学校を作ること。

やっぱり放課後や長期休暇の時間だけでは伝えきれないことがたくさんあるので、子どもたちが一日中のびのびと、自分らしく過ごせる場所を作りたいです。

ーー最後に、これから起業を目指す方へメッセージをお願いします!

佐野さん:まずは朝早起きして、朝の静かな時間に自分のやりたいことを探るのがおすすめです。

生活リズムを整えて、思考がスッキリしている朝に自分の心の内と向き合うのも一つの手かなと思います。

あとは「自分のやりたいことを後押ししてくれる人がいる」と信じることです。

人に話してみると、ポジティブな反応をしてくれたり、つながりを作ってくれたりと、良い流れが生まれるはずです。もしも私に連絡してくれたら、全力で背中を押しますよ!

内容は取材当時のものです。現在のサービス名・事業内容・活動状況は同社のホームページ・SNSなどをご参照ください。

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