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【Yellow Duck・中山繁生】海の波を利用した地球にやさしい発電システムを開発したい!

アドリブワークスでは、シード期”未満”に特化したスタートアップスタジオ「NOROSI」を運営しています。今回は、NOROSIに所属するスタートアップの起業ストーリーをご紹介します!

プロフィール

中山 繁生

Yellow Duck 株式会社
原子力発電所の放射能漏れ、台風による風力発電機の倒壊、太陽光パネル設置による土砂崩れ、火力発電によるCO2の排出など、発電が抱える様々な問題の解決を目指し、2012年から研究開発をスタート。行政書士事務所を営みながら、コネなし、資金なしの状態で「人や自然、動物を犠牲にする今の発電方法ではダメだ!」という思いに背中を押され、毎日奮闘しているディープテックスタートアップでアヒル発電の開発を進める。

▶︎プロジェクト:地球で最も優しい発電システムの開発

▶︎コーポレートサイト:Yellow Duck株式会社

海の波のエネルギーで電気をつくる「アヒル発電」


ーーYellow Duckの事業内容について簡単に教えてください。

中山さん海の波のエネルギーで電気をつくる発電システム「アヒル発電(Wave-DAC)」を開発しています。

近年、地球温暖化の進行やカーボンニュートラルへの関心の高まりもあり、世界中で太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーが進められています。

しかしこれらの再生可能エネルギーには「夜間や風が吹いていないときには発電できない」「発電装置を置ける場所が限られている」などの課題がありました。

そこで「まだ人類が活用できていない自然のエネルギーで持続的に発電できないか?」という問いからスタートしたのが、海の波の力を使ってエネルギーを作るアヒル発電です。

ーー前回のインタビュー記事では、中山さんの起業家精神とこれまでの努力が伝わるお話をたくさんうかがいました。その後、事業に変化はありましたか?

中山さん現在は、実用化にあたって越えなければいけない技術的な壁の突破口を見つけ、実際に実験できるステージまで辿り着いた段階です。

これまで、世界中で「海」を利用してエネルギーを取り出す取り組みが行われてきましたが、なかなか実用化まで至っていませんでした。

その最大の壁が、海底や沿岸に発電装置を作り、送電ケーブルを敷設する際にかかる莫大な建設コストの問題です。

そこでアヒル発電では、海の上に浮かべるだけで発電できる技術を3年かけて開発、特許を取得しました。

2023年はこの技術をベースに、複数のアヒル発電の装置を連携することで、さらに効率よく発電できる技術を開発。

長い試行錯誤を経て「これなら行けそうだ」という確信が持てたこともあり、やっと2023年の8月に法人化に踏み切ることができました。

ーー大きなイノベーションを積み重ねた末に法人化されたのですね。今までの取り組みを振り返ってみて、率直なお気持ちはいかがですか?

中山さん:やっとスタート地点に立つことができたという気持ちが大きいです。

「上空500mの気流を活用できないか?」「地球の重力を使えないか?」など、10年近く地球にやさしい再生可能エネルギーを探し続けてきました。

長い長い助走の期間の末に、やっとアヒル発電の技術を確立できたのが今です。

ここからはこの技術を実用化に向けてさらに磨き、世界に広めていくという新たなチャレンジのフェーズになります。

ピッチがきっかけで周囲の反応が大きく変わった


ーー「アヒル発電」はニュースメディアでの露出が増えており、2025年には大阪・関西万博の出展も予定しているなど、社会からの注目度が高まっているように見えます。何かきっかけはあったのでしょうか?

中山さん:2021年ごろから、ピッチイベントやビジネスコンテストに積極的に挑戦するようになったことがターニングポイントだったと思います。

当時はまだアヒル発電の技術が確立しておらず、アイデアしかない状態。

加えて、もともと人前で話すのが苦手だったため、ずっとピッチの場から遠ざかっていました。

でもNOROSIコーディネーターの山岡さんに「構想そのものがすごく面白いから、ピッチに出てみない?」と言っていただいたことがきっかけで、初めてピッチにチャレンジしました。

いざピッチに出場してみると、「自分の考えを外に出して、皆さんからフィードバックをもらうこと」の大切さが分かりました。

ピッチを見てくださった方たちから「もっとこうしたら良いんじゃない?」「こんな人を知っているよ」など、自分一人では知ることができなかった技術やつながりを紹介してもらうことが増えたんです。

今まで苦手だと思っていたピッチに挑戦することで、アヒル発電の可能性が広がっていくのを実感しました。

ーー様々なビジネスコンテストやピッチイベントに出場する中で、周囲の声も徐々に変化していったそうですね。

中山さん:アヒル発電の開発に取り組み始めた当初は、「そんなこと出来るわけがない」と門前払いされることが多くありました。

投資家の方に「一度面談してもらえませんか」と連絡しても無視され、プロトタイプを作る試作屋さんにHPから問い合わせをしても「作れません。お断りします」の一点張り。

興味を持ってくれる協力者の方を見つける段階でとても苦労していました。

しかしピッチイベントやビジネスコンテストでの受賞が増えると、今までの反応から一転、「出資を検討しているので、話を聞いてみたい」「一緒に何かできないか」と声をかけていただくことが増えたのです。

これは、コンテストにたくさん出るようになったことで人の目に触れる機会が増えたのもありますが、「ピッチに出て、フィードバックをもらい、改善する」というサイクルの中で、アヒル発電の構想がより具体的で現実的なものになってきたからだと思います。

懐疑的な反応ばかりだったスタートから、「もしかしたら本当に実現できるかも」と可能性を感じていただくことが増えて、大きく風向きが変わってきているのを感じます。

ピッチは練習あるのみ!苦手な人ほど練習を重ねよう


ーー今まで挙げてくれたことのほかに、「ピッチイベントやビジネスコンテストに参加して良かった」と実感されたことはありますか?

中山さんチームビルディングという点でも、ピッチは良い刺激を与えてくれています。

私がピッチイベントやビジネスコンテストに登壇するときには、チームのエンジニアに「イベントで『ここまで実現できています』と話したい」という相談をします。

ピッチの開催日までに、技術や試作における小さな目標を立てて、その目標に向かってエンジニアと二人三脚で走るという形で取り組みました。

一緒の目標を共有できたからこそ、私自身も「ここまで頑張ったエンジニアのためにも結果を残そう」とピッチを頑張れましたし、エンジニアもピッチで結果を残せた際にはすごく喜んでくれました。

いつ達成されるか分からない大きな目標に向かって進むよりも、「まずは目の前のピッチのために、これをぶつけてみよう」と小さく目標を区切ったことで、チームの結束が深まりました。

ーーチームの協力を得ながら、コンテストにチャレンジして、きちんと成果を勝ち取る。その結果、チームのモチベーションも高まるという良いサイクルが生まれているのですね。

また、中山さんがピッチに苦手意識を持っていたとは意外でした! おすすめのピッチの練習法はありますか?

中山さん:ピッチ当日はとても緊張するので、その場で考えた言葉を話して時間ぴったりに終わらせるのはまず無理だと思っていました。

なので、ピッチの時間に合わせたシナリオを用意して丸暗記しています。

私の場合は3分・5分・10分・15分……と、一般的なピッチの時間に合わせたシナリオをいくつか持っていて、すべて目をつぶってでも話せる状態にしていますね。

ピッチの本番前には毎日1時間ほど練習をして、本番では口が勝手に動く状態まで仕上げています。

不器用なので、とにかく練習をするしかないという感じです(笑)。

アヒル発電だけで日本のエネルギーを賄えるようにしたい


ーーYellow Duckの今後の展望を教えてください。

中山さん:今後は実用化へ向けた実験、またそのための資金集めに力を入れていきます。

ただ単に電気を作れるだけではなく、低コストで、故障のリスクが少なく、大量の電気を安定して作れる発電方法を、実用レベルの装置を試しながら模索する予定です。

今までは「波の力で発電する」ことそのものがチャレンジでしたが、ここからは本当に実用化に向けたチャレンジになっていきます。

将来的には、海の上にたくさんのアヒルを浮かべ、アヒル発電だけで日本のエネルギーを賄えるようになるのが目標です。

幸いなことに日本は海に囲まれており、安価で安全、クリーンなエネルギーを利用できる環境に恵まれていますから。

ーーそれが実現したら、まさにエネルギー革命が起こりますね……! 今から楽しみです。最後に、これから起業を目指す方へメッセージをお願いします!

中山さん:アイデアがあれば、ぜひ一歩踏み出してみてほしいと思います。

誰かにアイデアを聞いてもらったり、試作品を作ってみたりなど、少しずつ進んでいく中で「次はあれができそうだ」「こんなことができるかも」と自分のできることが広がっていきます。

ときには断られたり、否定されたりすることもあると思いますが、新しいアイデアははじめから上手くいかないのが当たり前です。

どうしても越えられない壁にぶつかったときも、もがき続ければ色々な人が助けてくれたり、壁を迂回する方法が見つかったります。

ぜひ諦めず、少しずつでも良いので、今自分にできる一歩を踏み出していってください!

内容は取材当時のものです。現在のサービス名・事業内容・活動状況は同社のホームページ・SNSなどをご参照ください。

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