【結果報告】ビジネスコンテスト in 養父市
2025年10月8日、兵庫県養父市(国家戦略特区)にて、「ビジネスコンテスト in 養父市 実証実験報告会・交流会」を開催しました。2025年6月22日に行われた「ビジネスコンテスト in 養父市」にて養父市賞が贈呈された4名の事業者が3ヶ月にわたり、地域の事業者等とコラボレーションして行われた実証実験の成果が発表されました。
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ビジネスコンテスト in 養父市とは
「ビジネスコンテスト in 養父市」とは、国家戦略特区であり、実証実験の“聖地”とも呼ばれる兵庫県養父市が主催し、中山間地域における地域課題の解決を起点に、持続可能な産業活性化を目指すビジネスプランを全国から募集し、養父市での実証実験を行うプロジェクトです。
国家戦略特区である養父市ならではの実証環境を活かし、挑戦的な新規事業の創出と、地方からのイノベーションを支援しています。
今年は国内だけでなく海外からも応募があり、養父市というチャレンジフィールドに熱意ある起業家たちが集結しました。2025年6月22日に開催された「ビジネスコンテスト in 養父市」では、4名の事業者が養父市賞を受賞し、高齢者支援、英語教育、視覚支援機器、農業ロボットという多様な分野で、地域課題の解決に取り組みました。
イベントのハイライト
養父市の大林賢一市長の挨拶からイベントがスタート

冒頭では、養父市の大林賢一市長より挨拶があり、起業家への感謝とともに、「養父市を実証実験の”聖地”としてさらに発展させていく」という決意が述べられました。

またプロジェクトを運営する株式会社アドリブワークス代表取締役CEO 山岡より、これまでの事業経緯、そして4事業者の発表への期待が語られました。
起業家たちが地域課題を解決する事業アイデアを披露

▲株式会社OTERA(神奈川県逗子市)『単身世帯の高齢者をサポートする地域共助サービス「マモルバ」』代表取締役 武田 啓氏
https://otera.co.jp/
アプリ「マモルバ」はスマートフォンの最終利用時間を共有することで、民生委員や家族が離れていても高齢者の生活状況を把握できる仕組みです。
今回は、地域の民生委員と市民の方が参加し、アプリを活用した見守りの頻度や安心感の向上効果が確認された一方で、非家族間での連携手続きやアプリ操作の簡素化といった課題も明らかになりました。
武田氏は最後に「民生委員の効率化の実証実験は、日本初の試みではないか。この一歩を踏み出させていただいたのは大変ありがたく、もっとより良い社会、地域づくりに貢献できれば」と、今後の抱負を語りました。

▲株式会社Swell(⻑野県上⽔内郡信濃町)『英語DXで教育現場の持続可能性の実現を目指す「TypeGO」』 代表取締役 青波 美智氏
https://swell-inc.com/
教育現場における「英語を書く機会の不足」という課題に対して開発した「TypeGO」は、英単語学習とタイピングを融合させたICT教材です。
今回は養父市内の八鹿青渓中学校や公立小学校で実証を実施。約200名の生徒が3週間にわたり利用し、平均タイピングスピードと英単語記憶率が大幅に向上しました。
青波氏は「夏休み期間にもかかわらず、市の皆さんが学校との調整に尽力してくださったことに感謝しています。今後は小学校から継続利用を促し、中学校へのスムーズな連携を図りたい。また、地域の観光資源などを反映した養父市オリジナル教材の開発を進め、地域貢献のかたちを探っていきたい。」と展望を語りました。

▲BOVLIFE株式会社(東京都千代田区)『暗所視・視野支援機器で見え方でお困り方の未来を灯したい』代表取締役 石塚 隆之氏(ZOOM登壇)
https://bovlife.com/
「ATARO.®」(Assistive Technology AR)は、世界初の視覚障害者向けの自立支援メガネ。一般的なARグラスは映像をディスプレイに投影する受信機であるのに対し、ATARO.®は目の前の現実を見る「メガネ」として機能します。
今回は、東京から視覚障がい当事者を招き、図書館での読書、神社での拝観、レストランでの焼肉、そして夜の高原や鉱山跡の散策など、屋内外・昼夜を問わない多様なシーンで機器の有効性を検証。参加者からは「お肉のサシまで見えて、自分で焼いて食べることができた」「来年度、有料でも構わないのでもう一度参加したい」と感動の声が上がり、自立支援における大きな可能性を示しました。
石塚氏は、「養父市の取り組みをきっかけに、香港からも問い合わせをいただいた。今後はこの実証を有料の観光ツアーとして事業化し、養父市から全国、そして世界へ広げていきたい」と力強く語りました。

▲THE Robotics株式会社(大韓民国 大田広域市)『農家の労働力不足問題を解決するための自律追従型運搬ロボット「botbox」』Yucheol Noh(ノ・ユチョル)氏
https://therobotics.kr/en/
韓国から参加したTHE Robotics株式会社は、農業の労働力不足を解決すべく、人の後を自動で追従する運搬ロボット「botbox」の実証を行いました。特別なUWBセンサーを用いたアルゴリズムにより、屋外でも正確な追従が可能。リモコン1基、本体2基、計3基のセンサーで距離と角度を計算し、人との最適距離を保ちながら人を追従します。海外では台湾と中国に輸出実績があります。
市内のピーマン農家や梨農家で実演を行い、そのスムーズな追従性能と安全性に参加者からは「まるで生き物のよう」「使う人のことをよく考えた設計」と高い評価を得ました。この実証実験への参加がきっかけで、大手鉄道会社からも導入検討の連絡があり、農業以外の分野への展開も視野に入っています。
ノ・ユチョル氏は、「今後は、より狭い場所で使える小型化や、柚子農家など他の作物での実証も検討中。4年間で日本で1000台を普及させたい」と具体的な目標を掲げました。
交流会と体験展示
全てのプレゼン終了後、登壇者、主催者、参加者で集合写真を撮影。その場で決まった養父市を象徴する「Yポーズ」で、笑顔あふれる一枚となりました。

▲集合写真 養父市のYマーク(非公式)で皆さん笑顔
撮影後は、交流会と共に、各企業のプロダクトを実際に体験できる展示会が開催され、参加者たちは、アプリ操作、機器試着などを通じて、活発な意見交換がなされました。

▲株式会社OTERA:地域共助サービス「マモルバ」アプリの体験

▲株式会社Swell:英語DXソフト「TypeGO」の体験

▲BOVLIFE株式会社:暗所視・視野支援機器(ゴーグル)の体験

▲THE Robotics株式会社:自律追従型運搬ロボットの体験
まとめ
今回の実証実験報告会・交流会では、各分野の起業家が3ヶ月の成果を共有し、地域課題の解決に挑んだプロジェクトの知見を披露しました。各社とも、さらなるブラッシュアップと展開を計画しており、養父市を起点とした全国、そして世界への展開が期待されます。
起業家たちの挑戦と情熱が、養父市という「挑戦が歓迎されるまち」を舞台に、多様なイノベーションを生み出しています。今後もこの「ビジネスコンテスト in 養父市」の取り組みを通じて、人とアイデアが集い、未来をともに創る循環が続くことを期待しています。


