
NOVARE boost 挑戦者ピッチ in SusHi Tech Tokyo 2024【イベントレポート】
日本を代表する建設会社である清水建設株式会社(以下、清水建設) とアドリブワークスが共同開催するスタートアップ支援プログラム「NOVARE boost(ノヴァーレ・ブースト)」 。
同プログラムに挑戦するスタートアップよるピッチイベントが2024年5月16日、「SusHi Tech Tokyo 2024 グローバルスタートアッププログラム」内「清水建設 オープンイノベーションイベント」にて開催されました。本記事では当日の様子をレポートします。
本記事は2024年5月15〜16日の2日間にわたって開催された「清水建設 オープンイノベーションイベント」の一部をイベントレポート化したものです。
NOVARE boostとは
NOVARE boostは東京で起業予定のスタートアップに対し、アドリブワークスと清水建設の2社がPoCから海外展開までの一貫した支援を提供する東京都の「TOKYO SUTEAM」協定事業です。
AIを用いたビジネスプラン策定支援ツール「trivenAi(トリブンエーアイ)」の無料開放など、ビジネスアイデアを磨き上げるための様々なサポートを用意しています。さらに審査を通過したスタートアップには、東京都潮見にある清水建設のイノベーションセンターNOVAREを中心に、清水建設が持つ多様な経営資源を提供。最新技術やビジネスプランのPoCを支援します。
参考リンク
講演「NOVARE boost」とは?
ピッチイベントの前に、清水建設の佐々木浩平氏とアドリブワークス 山岡から、NOVARE boostの概要とプログラムの挑戦者が活用できるビジネスプランジェネレーター「trivenAi」について説明が行われました。
佐々木氏は「建設は人々の生活に深く関わる領域だからこそ、スタートアップと連携することで経済に大きな影響を与えられるはず。清水建設の得意分野である都市実装のアセットと実装できるエンジニアの技術力を活かし、様々なスタートアップと共創しながらイノベーションを起こしたい」と、スタートアップ支援への意欲を伝えました。
山岡からは「trivenAi」によるビジネスプラン生成のデモンストレーションを披露。「trivenAiによって事業立ち上げの仮説検証の70%を省力化できる。クリエイティブや戦略策定など、残りの30%のタスクに集中できる環境を作ることで、より多くのビジネスアイデアを議論の土台に乗せられるようにしたい」と語りました。
NOVARE boost挑戦者5名がピッチに挑戦
当日は5名の挑戦者がピッチを披露。ここではそれぞれのチャレンジャーのビジネスプランを紹介します。
株式会社b-jam 今井 雄大 氏
「コロナ禍以降、リアルイベントの需要が増えていますが、イベント制作の現場は依然として非効率が残っています。ライブなどのリアルイベントを企画・運営する際にかかる手間を標準化・デジタル化するとともに、スタッフィングを効率的に実施できるワンストップサービス『CREW WARE』を立ち上げ、エンタメ業界のあり方を変えたいです」
株式会社FullDepth 吉賀 智司 氏
「水中のインフラ維持管理の需要が高まる中、減少する潜水士の代替として、ダムや港湾・洋上風力など多様な現場で活用可能な産業用水中ロボット『DiveUnit300』の開発を行なっています。今後は清水建設との実証実験を通じて水中での計測のデジタル化を進め、設計からメンテナンスまでの効率化を図る予定です」
株式会社CinemaLeap 大橋 哲也 氏
「XR技術を用いた映画制作を行なっており、これまでに7作品が国際映画祭などでノミネート、博物館や美術館での上映も実現しています。この技術を活かした新規事業『Immersive Journey』を通じて、広い空間で100人規模が同時に異世界を体験できる未来の映画館をオープン。XR映画の普及と新たなエンターテインメント体験の提供を目指します」
カイユ 弥生 氏
「グローバリゼーションの進展に伴い、インターナショナルスクール(国際学校)に通う子どもとその家族は年々増えています。しかし家庭と学校の言語やカリキュラムの違いにより、子供たちが適切な支援を受けられないなど、様々な教育課題が山積しているのが現状です。そこで都内のインターナショナルスクールと連携し、国境を越えた家庭教師マッチングプラットフォームを立ち上げたいです」
佐藤 美鶴 氏
「日本ではまだまだ女性の活躍が不十分です。そこで女性が理想の職場を見つけるための口コミサイト『Daisy』を立ち上げ、女性の主体的なキャリア構築を支援したいです。さらに就職や転職支援、企業向けのコンサルティングも行い、女性のキャリア支援を通じた日本経済全体の活性化を目指します」
パネルディスカッション イノベーションの未来を築く 〜大学・大企業・スタートアップの協働戦略〜

左からアドリブワークス山岡、慶應義塾大学浅井氏、b-jam今井氏、清水建設佐々木氏
続いて慶應義塾大学 特任教授 浅井 誠 氏、清水建設 佐々木氏、b-jam 今井氏をパネリストに迎え、大学・大企業・スタートアップそれぞれの立場から「協働戦略」をテーマにトークが行われました。
清水建設の佐々木氏はイノベーションの課題について「『なぜ自社がやるのか』『何のためにやるのか』という疑問が多く、社内でも議論が絶えない」とのこと。それを踏まえて「大企業のスタートアップ支援は、誰を幸せにするのかという明確なビジョンと、ビジネスとしての持続可能性の両天秤を追う必要が重要だ」と述べました。
続いて株式会社b-jamの今井氏はスタートアップの視点から「多くのアイデアが存在する中で、どのイシューとソリューションに集中するかを見極めることの難しさ」を課題に挙げました。またファイナンス戦略も含めた意思決定と戦略実行の難しさなど、スタートアップが一社のみでイノベーションを実現するハードルの高さを強調しました。
慶應義塾大学の浅井氏は、大学との協業の現状について「多様なスキームを持っているものの、現場での実践が足りない」と。その背景として、大学の組織構造や指示命令系統、行動原理が民間組織とは異なることを挙げ、「大学によるスタートアップ支援は現状、研究者へのインセンティブがなく、自主性やボランティア精神に任せている状態」だと指摘しました。
その後も大学・大企業・スタートアップという三者三様の視点から、協業のヒントについて意見を交わした本セクション。
ディスカッションの最後には「異なる視点や行動原理が背景にあることを前提に、長期的な観点から共有可能なイシューを立てることがブレイクスルーを生む」とまとめ、イノベーションには長期的な視野が必要であることを再確認しました。
まとめ
今回ピッチに挑戦した5名による革新的なアイデア・技術と、清水建設のアセットが化学変化を起こし、社会に新たな価値が生まれることを予感させた本イベント。このイベントとNOVARE boostの取り組みが大学・大企業・スタートアップの協業を促進し、日本の経済と社会を豊かにするきっかけとなることを期待しています。